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退院後も安心して
暮らし続けるために。

 

 

浅井正子(地域包括ケア病棟看護師長)/稲沢市民病院


患者と家族を、
安心の療養生活へ繋ぐ、
地域包括ケア病棟の挑戦。

main稲沢市民病院では、平成28年3月から
「地域包括ケア病棟」を稼働させた。
責任者を務める浅井正子看護師長は、「患者さんの不安を取り除きたい」という想いを胸に新たな<病棟>づくりに奔走する。


 

 

 

 

 

退院後の療養生活にまつわる不安を一つひとつ解消し、
患者と家族を生活の場へ送り出す。

 Plus顔写真1稲沢市民病院に地域包括ケア病棟(詳しくはコラム参照)が誕生して、約5カ月。「ようやく業務の形が整ってきました」と語るのは、この病棟の責任者を務める浅井正子看護師長である。同病棟では主に、急性期治療を終えた患者を受け入れ、60日間の入院を限度に、病状の安定や日常生活動作の改善を図り、在宅復帰をめざしていく。いわば、家に安心して帰るための<準備をする場>である。
 その明確な目的を遂行するために、浅井が優先的に取り組んできたのは、スタッフの意識改革だった。「どうすれば、患者さんがおうちに帰れるか」というところから、もう一歩突っ込んで「どうすれば、本人やご家族が困ることなく生活できるか」までを考えて、患者と家族を支援するように、浅井は同病棟の看護のあるべき姿を示し、自ら実践してきた。「徐々にですが、個々のスタッフが生活への意識を高く持つようになってきたと思います」と浅井は手応えを語る。
054_L23_InazawaC_2016 浅井がよく口にするのは、「ご家族を見つけたら走っていって、話をしなさい」という教えだ。患者の生活復帰は、家族の協力なくしては実現しない。スタッフたちは、家族との密なコミュニケーションを心がけ、機会を捉えては食事やトイレの介助方法などを家族に伝えている。また、必要に応じて、リハビリスタッフらと一緒に自宅を訪問し、生活する上での問題点を洗い出し、一つひとつ対策を練っていく。こうした入念な準備とともに、訪問看護師など在宅を支える多職種ともしっかり情報を共有。その結果、無事に退院の日を迎えたときの喜びは「何ものにも代えがたい」と、浅井は言う。「退院を心待ちにしていた患者さんが見せる笑顔が、何よりのご褒美ですね」。
100_L23_InazawaC_2016 浅井がこの病棟の看護師長に抜擢されたのは、かねてより「退院支援に関わりたい」と上司に申し出ており、その願いが叶ったものである。そもそも浅井が退院支援に興味を持ったのは、急性期病院の入院日数が短くなり、退院する患者や家族から「こんなに早く追い出されて…」という言葉を聞くようになってからだった。なぜ患者・家族はそんな不満を抱くのか。浅井は「それは、不安の表れではないか」と考えた。医療器具や薬の管理、介助方法への不安、経済面の不安…。「さまざまな不安を解消できれば、安心して在宅療養に踏み出せるはず」。その想いこそが浅井の原点であり、新病棟における看護の根底に貫かれている。ボックス(シアワセ)

 

 

 

患者と家族のさまざまな不安をしっかりと受け止め
長い療養生活をずっと支えていく。

Plus顔写真2 「以前の当院には、退院支援、退院調整という概念すらない状況でした」。そう打ち明けるのは、地域医療連携室の本澤桂子管理看護師長。本澤は平成24年、地域医療連携室に配属され、院内初の退院調整看護師として、何もないところから退院支援・調整の仕組みを作ってきた立役者だ。各病棟に退院調整リンクナース(※)を育て、在宅医療を担う多職種と連携しつつ、患者を生活の場に戻す道筋を作り上げてきた。その本澤にとって、地域包括ケア病棟は念願の新病棟である。「以前は、<もう少しリハビリすればおうちに帰れるのに…>という方も、遠方の病院へ紹介しなくてはならず、ご不便をおかけしていました。でも、これからは当院で生活復帰まで担うことができ、今後の病棟の活躍に期待しています」。
089_L23_InazawaC_2016 そんな熱いエールを背中に受け、浅井は病棟のビジョンをふくらませる。「軸に据えるのは、これからも<不安の解消>です。患者さんやご家族は<これならやっていけそうだ>と思って自宅に戻るわけですが、そのとき、必ずしもすべての不安を解消できているわけではありません。たとえば、<この先、容態が急変したらどうしよう…><介護のストレスで倒れないだろうか…>など、療養生活への不安は尽きないと思うんです。この病棟が、そうしたさまざまな不安に応える<受け皿>となって、患者さんとご家族を末永く支えていきたいと考えています」(浅井)。地域包括ケア病棟は本来、急性期治療を終えた患者を在宅へ繋ぐ一方通行の機能だけでなく、療養中の患者を受け入れる逆方向の機能も持つ。浅井は今後、地域との双方向の関係性を育てながら、真の意味で<安心の在宅療養>を支えていく決意だ。

※ リンクナースは、専門チームなどと病棟看護師を繋ぐ役割を持つ看護師。

 

 

 


 

 

columnコラム

●地域包括ケア病棟は、平成26年4月の診療報酬改定で新設された病棟区分。急性期治療を終えた患者を受け入れ、スムーズな在宅復帰を支援する。また、自宅や介護施設などで療養中の高齢者の容態が急変した場合も速やかに受け入れ、治療後、再び在宅へ帰していくなど、病院と在宅を繋ぐ要の役割を担っている。

●稲沢市民病院では平成28年3月、一般病床320床のうち、46床(5階南病棟)を地域包括ケア病棟に転換。まずは、同院の一般病床からの転棟患者を中心に受け入れているが、ゆくゆくは地域包括ケア病棟本来の機能を備える計画を持つ。具体的には、他の急性期病院からの紹介患者や、在宅療養中に急性増悪した患者を受け入れるとともに、家族の介護負担軽減を目的としたレスパイト入院にも積極的に対応。在宅療養を多面的に支援し、市民の生活を守る市民病院の責務を果たしていく構えだ。

 

backstage

バックステージ

地域包括ケア病棟に対する
理解を広めていく必要性。


●「地域包括ケア病棟で何が行われているのか、他の病棟のスタッフにはまだ理解されていない気がします」。自らのアピール不足を反省しつつ、残念そうな表情を浮かべる浅井看護師長。稲沢市民病院にこの病棟がオープンして間もないだけに、院外のみならず、院内にも充分にその病棟機能が認知されていないのが実情だ。

●しかし、超高齢社会の地域医療において、医療と生活を繋ぐ地域包括ケア病棟が重要な役割を果たしていくことは間違いない。院内の職員がその機能を充分に理解して有効活用するとともに、院外にもその機能をアピールし、利用促進に繋げる努力が必要だろう。何よりも在宅療養中の患者と家族の視点に立てば、身近な場所に、いざというときに頼れる病棟があることは非常に心強い。今後、同院の地域包括ケア病棟が、在宅療養の支援機能を拡充させつつ、その存在意義が地域で認められるよう働きかけることが重要ではないだろうか。

 

 


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