3,551 views

ƒvƒŠƒ“ƒg

地域の〈最後の砦〉で
あり続けるために。

 

 

安城更生病院


「すべての外科系疾患は、
安城更生病院で完結させる」。
同院外科の決意と誇り。

main

地域の最後の砦として、二次医療圏で発症するあらゆる疾患への対応が求められる安城更生病院。
そのなかで外科を束ねるのが、新井利幸副院長 兼 外科代表部長である。
すべての外科系疾患において標準治療を提供し、そして、患者が望むのであれば、標準治療以外にも挑んでいく。決して患者を見放さない、同院の外科を追った。

 

 

 

 

 

専門を超えたチームと診療科を超えた連携が
安城更生病院の〈外科の総合力〉を可能にする。

0A8A6199 「地域で発症する外科系疾患は、当院ですべて完結します。手術が困難という理由では、他院への紹介はほとんどありません」。そう話すのは、安城更生病院の副院長 兼 外科代表部長、新井利幸。新井が率いる同院外科は、総勢18名。心臓と肺を除く、首から足までの臓器の手術を担当し、年間約1400件の手術を行う。「治療は〈標準治療〉が基本」と話す新井は、標準治療について「エビデンスに基づいた、現時点で最善の治療方法であり、当科は、その標準治療がすべての領域で受けられる県内でも数少ない病院」と説明する。とはいえ、複合疾患の患者など、標準治療を行えないケースもある。同科ではそうした際、必ずカンファレンスで検討して、〈患者の希望〉、〈患者の安全〉、〈執刀医の力量〉の3つをクリアし、成功の可能性があるならば、治療に挑むという。「患者さん一人ひとりの状態に応じ、なるべく希望に沿うよう努めます」(新井)。
 すべての外科領域で標準治療を提供し、標準治療が難しい患者にも対応できる能力を有する、安城更生病院の外科。これを支えるものの一つがチーム体制だ。同科では、消化器外科などの各領域にリーダー(専門医)を配置。リーダーが基本的な診療方針を決めるものの、治療に際しては専門を超え、外科全体が一つのチームとして補い、支え合う。「当科では、血管外科医が消化器疾患の手術のサポートに入ったり、術後管理することも珍しくありません。『専門外だから』というのは通用しないのです」(新井)。
0A8A6221 そしてもう一つが、麻酔科はもちろんのこと内科との強い連携である。手術適応となった患者に対し、内科は、患者の健康状態や他の疾患をコントロール、手術に向けて患者を最良の状態に整えていく。そして術後は、患者の健康管理をしつつ、合併症などがあれば迅速に対応、患者を無事退院へと繋げていくのだ。新井は言う。「複合疾患を持つ患者さんの場合、内科の協力なしに手術の成功はあり得ません。その点、当院の内科は非常に協力的。手術の際は限界まで挑戦できますし、術後は、万全のサポートがあるので、非常に心強いんです」。
 安城更生病院の〈外科の総合力〉を支える〈チーム〉と〈連携〉。この背景には、同院の〈伝統〉があると新井は指摘する。「私が赴任した11年前、最も驚いたのは、診療科や職種の垣根が低く、協力関係にあること。では、なぜそれが可能かというと、すべての職員のベクトルが〈患者さん〉に向いているからなんですよ」。

ボックス(知ろう)1

 

 

伝統の上に、患者の〈安全〉と医師の〈挑戦〉を両立。
そして今、〈安城モデル〉をめざす。

 0A8A6309 現在の外科をつくりあげた新井だが、自身にもこの10年間で大きな変化があったと言う。「私はブラックジャックに憧れて〈外科医〉になりました。自分一人の力で患者さんを治し、技術に磨きをかけることで外科を極めたかった。だから、赴任当初は、私の積み上げてきた実績が評価され、患者さんが私を頼ってくれることが嬉しかった。でも、当院は地域の高度急性期病院であり基幹病院。あらゆる疾患の、膨大な数の患者さんが来院し、しかも、ここで治療できないなら、他に行くところはないという病院です。次第に、当院が地域において果たすべき役割は何か自分のできることは何か、を考えるようになりました」。
 新井が出した結論。それは、すべての疾患で、いつでも誰にでも標準治療を提供できること。そして、自らが傑出した外科医になるだけではなく、マネジャーとして、増え続け、アップデートしていく標準治療に常に対応していく組織を創り上げることだった。そのために、新井は、患者の安全を確保した上で、医師の一人ひとりが挑戦し、スキルアップできる環境づくりを適切にマネジメントする。その上で、若手の底上げにも力を注いだ。「手術チームには必ず若手を一人入れ、なるべく診療に携われるよう努めています。経験でしか学べないことはたくさんありますから」。こうし0A8A6206て新井は、膨大な患者の安全と診療の質をコントロールし、外科全体のレベルアップを図っていったのだ。
 しかし、新井はまだ満足することはない。「重要なのは、今の〈最後の砦〉としての状態を継続すること。そのためにも、将来的には、医師の入れ替わりで影響を受けない、属人的ではない安城独自の体制や術式、いわば、〈安城モデル〉を創りたい。それこそが、〈最後の砦〉であり続けることを可能にする鍵だと思うのです」。

ボックス(知ろう)2

 

column

コラム

●医師の間には、外科系の診療科は「体育会系」で「キツくて大変」というイメージがあるという。新井は、こうしたイメージに象徴される、外科の職場環境の改善とマネジメントにも取り組んでいる。

●新井がまず行ったのが、オンとオフをはっきりさせること。時間外の呼び出しを極力少なくし、オフのときは、病院に来なくてもよい体制をつくりあげた。また、手術が長引いているチームがあれば、早く手術が終わったチームが手伝いにまわるような協力体制をつくり、外科全体で仕事量を平均化。外科医にとって、魅力的な職場にすることをめざしている。

●さらに新井は、女性の外科医が働きやすい職場づくりにも取り組む。男女関係なく馴染めるような雰囲気づくりに努めるほか、出産や育児をしながらも外科医を続けられる体制づくりを進める。現在、同院の外科には5名の女性が在籍し、1名が育児中、1名が産休中。外科における女性の割合は、27・8%と全国平均7・1%(※)よりはるかに高い。
※ 平成24年 医師・歯科医師・薬剤師調査(厚生労働省)より

 

backstage

バックステージ

〈安全〉と〈挑戦〉を
両立させるもの。


●〈安全〉と〈挑戦〉は、二律背反するものである。患者の安全だけを考えれば、治療で挑戦はできない。何もしないことが一番安全ということになりかねないのだ。実際、複合疾患を持つことを理由に手術を断る病院もあるという。

●しかしそれは、〈最後の砦〉としての役割が期待される地域の基幹病院では通用しない。その病院で見放されたら、患者は行くところがないからである。さらに付け加えるならば、挑戦がない環境は、医師から成長の可能性も奪うであろう。

●では、安全と挑戦を両立させるために何が必要なのか。それが〈マネジメント能力〉である。判断に必要な情報を見極め、そして集めた情報から、安全と挑戦が両立するギリギリのポイントを探っていくこと。そして、その両立が保たれるよう環境を整えていくこと。この極めて高度なマネジメント能力こそが、背反する〈安全〉と〈挑戦〉を両立させるのである。

 


3,551 views