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新人看護師が見つけた
〈手術室看護〉。

 

 

山川清野/岐阜県総合医療センター 中央手術部


手術の主役は、患者。
その患者への理解を深め、
すべてを安心の手術に繋ぐ。

main人との関わりが好き、人とのコミュニケーションが大切。
そんな新人看護師が、器械出しから外回りへと歩み続けるなかで、手術室看護の本質、手術室看護師の真の姿への理解を深める。

 

 

 

 

 

器械出しを1年4カ月で終了。
外回りとなってから一人ひとりの患者に向き合い、
一人ひとりの患者への理解を深めることの大切さを知る。

 Plus顔写真1 山川清野は、岐阜県総合医療センター〈中央手術室〉に勤務して3年目である。「私は人と関わるのが好きで、人とのコミュニケーションを大事にする仕事として、看護師を選びました。ただ、手術室には患者さんとの関わりは、少ないだろうと思っていたんです」。
 ところが、学生時代、病院見学会で知った同院の手術室は、彼女の思いを大きく覆した。「術前の患者さんに、看護師がずっと寄り添って話しかけている。全身麻酔では、眠るまでやさしく声をかけ続けている。その姿がとても格好良く見えて、手術室も患者さんとちゃんと関われるんだと思いました」。もちろんそのとき、不安への傾聴の仕方、声のかけ方などまで解ったわけではない。だが自分のイメージを破った、手術室の意外性は大きく心に残り、山川は同院に入職の際、希望部署のなかに手術室を入れたのだった。
 入職後、手術室勤務となった山川は、手術中に手術器具を医師に手渡す〈器械出し〉からスタートした。同院は、外科系が17診療科、年間手術件数は7205件(平成27年実績)。彼女は、17診療科の器械出しを、1年4カ月ほどでマスターした。「でも、患者さんと積極的に関わる心の余裕などありませんでした」と言う。
0927岐阜総合医療センター¥IMG_3540 そんな彼女が、〈外回り〉になったのは、入職2年目の夏である。外回りとは、手術を受ける患者の心身ケアを行うと同時に、安全な手術が行われるよう、手術チームを支援する看護師である。
 その仕事の一つに、患者への術前訪問がある。山川には、待望の患者とのコミュニケーションの場。「手術の説明をしたり、質問に答えたりしていると、患者さんは病気への思いや、ご家族のことなどもお話しになります。それがより深い患者理解に繋がりました」。
 患者理解が深まると、山川の手術を見つめる目線が変わった。術前の体位固定、術中のモニターチェックにも、患者の情報を活かす。あるいは、血管痛(点滴などによって起こる血管の痛み)がある患者には、腕をさする。緊張して震えているときは、手にやさしくタッチングする。一人ひとりの患者を、単に今日の手術対象と見るのではなく、その患者と向き合い、その患者にふさわしい対応をするようになった。
 「こういう看護がしたかった。こういう看護師を見て格好良いと思った」。山川は、見学会で感じた手術室の意外性の中味が理解できた。ボックス(シアワセ)

 

 

 

患者に関わろうとする気持ち、患者に合った看護の提供、
それは手術室でも変わらない。
患者さんを看る、手術室看護師。その歩みをさらに深めたい。

Plus顔写真2 山川清野の先輩、廣瀬早緒美看護師は手術室勤務6年目。山川より一足先に、器械出し、外回りという手術室看護の道を歩んできた。廣瀬は「外回りをやり始めて、やっと手術の全体が見えるようになりました」と言う。それまでは、器械出しの看護師、執刀医、麻酔科医、臨床工学技士等など、すべてを点で見ていた。それが一つに繋がったとき、廣瀬は「看護師にとって大切なのは、〈患者さんを看る〉こと」だと気づいた。術前訪問で患者を理解し、術中にはアセスメント(情報収集、分析、評価)を続け、全身麻酔でも局所麻酔でも、〈患者の今〉を正確に観察し、個々の患者に合った手術を遂行する。それができるのは看護師。以来、廣瀬は後輩たちに「患者さんを看るのよ」と言い続けている。
IMG_3383 廣瀬の言葉を、山川は3年目の今、少しずつ体現できるようになった。「手術室は特殊な空間ですが、看護師が患者さんに関わろうとする気持ちは、病棟看護師と一緒です。毎回、患者さんに合った看護をするのも、一緒です。手術から患者さんを見るのではなく、患者さんから手術を見る。その視線があれば、患者さんの人間性にも配慮した、安心で安全な手術を提供することにも繋がると思っています」。そう語る山川の目標は何だろうか。「患者さんとのコミュニケーションに重きを置くと、医師との関わりが弱くなるとか、まだバランスが悪いんです。もっと手術全体を見つめて、速やかに動ける外回りになっていきたいですね」。
 平成28年8月30日、同院で看護学生のための病院説明会が行われた。中央手術部を代表して手術室を紹介するのは、山川清野。器械出し・外回り業務、手術室看護の魅力、一つひとつを丁寧に語る山川であった。

 

 

 


 

 

columnコラム

●岐阜県総合医療センター看護部は、PNS(パートナー・ナーシング・システム)を導入している。PNSとは、看護方式の一つで、二人の看護師が協働して、複数の患者を受け持つもの。中央手術室では平成28年5月からのスタートとなった。

●PNS導入を担当したのが、廣瀬早緒美看護師。同システムを開発した福井大学医学部附属病院への見学・研修を経て、具体的な導入計画を立案、そして、実施した。

●廣瀬は言う。「PNSを簡単に言うと、ペアを組んで二人で看護方針や役割分担を決め、互いに教え合って看護能力を高めていくものです。手術室は、器械出しと外回りとが術前に〈作戦会議〉を行うなど、PNSと共通する部分はすでにありました。それをさらに高めて、キャリアに関係なく、意見を言い合い、一緒に学び合う。そのパートナーは一年間同じなので、学びの蓄積が格段に違ってくるのではと期待しています」。

 

backstage

バックステージ

患者の個別性を重視した、術前訪問、
そして、術中アセスメントの大切さ。


●看護には、〈診療の補助〉と〈療養上の世話〉がある。診療の補助というと、普通は、医師の補助と受け取りやすい。だが、手術室看護師を選んだ山川清野、いや、岐阜県総合医療センター・中央手術室の看護師たちは、診療の補助のすべてを、医師の補助とは考えていないようだ。

●すなわち、手術という、ある意味では極限的な治療を受ける患者を、いかに補助するか。それは術前訪問に始まり、患者の個別性を重視した術中アセスメントを通して、心身ともに安心・安全に手術を提供するための、最善の看護アプローチとなっていく。

●手術室看護師は、おそらくそれが初めから解っているわけではない。器械出しというテクニカルな面を十二分にマスターしたのち、それに基づく手術の専門的な知識をもとに、患者へのまなざしを培っていくのだ。そうした看護師たちがいるということ。それは私たち生活者にとって、貴重な、且つ大切なことだと考える。

 

 


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