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「人生を生ききる」を
支えるために。

 

 

春日井市民病院


人生の最終段階を迎えた
患者の思いを汲み取り、
家族へ、地域へ繋ぐ。

main

EOL(エンドオブライフ)は、日本語に訳すと<人生の最終段階>。
人は誰でも、老いや病気などによって人生の終焉を迎える。
その最終段階に、本人が穏やかに過ごせるように支援することをEOLケアという。
春日井市民病院では今、地域の先陣を切ってEOLケアの取り組みを進めている。

 

 

 

 

 

人生の最終段階は望み通りに生きたい。
その希望を叶えるためEOLケアチームが立ち上がった。

0913春日井市民病院¥IMG_3054 「抗がん剤治療が辛いというお話ですが、続けていきますか」「ゆくゆくはご自宅に戻りたいですか、それとも施設や病院で…」「何かやりたいことはありますか」…。これらは、春日井市民病院のEOL(エンドオブライフ)ケアで、患者に問いかける内容の一例だ。同院では平成27年、患者の人生の最終段階の医療の意思決定を支援する専門チームとして、EOLケアチームを結成した。メンバーは医師3名、看護師4名、臨床心理士1名。このうち6名は、厚生労働省(以下、厚労省)主催の研修に参加して、延命治療の倫理的問題やカウンセリングの技法を学んだ〈相談員>だ。
 同院におけるEOLケアの対象は、病期〈ステージ>の進んだがん患者や、COPD(慢性閉塞性肺疾患)患者、透析患者など、疾患を問わずさまざまである。まず相談員が主治医による病状説明の場に同席し、本人と家族の思いを丁寧にヒアリングする。そこで解決できない問題(本人と家族の意見の相違、倫理的な問題など)があれば、チーム全員で検討し、その後も面談を重ね、人生の最終段階を有意義に過ごせるようサポートしている。
0913春日井市民病院¥IMG_2846 同院がこうしたEOLケアに着手したのは、厚労省の「平成27年度人生の最終段階における医療体制整備事業(詳しくはコラム参照)」への応募がきっかけだった。その先導役を担ったのは、がん相談支援センター部長の會津恵司医師(外科医長)である。「これまで多くのがん患者さんを看取ってきた経験から、〈がん患者さんが人生の最終段階をどう過ごしたいか>という意思決定を支援するには、専門的な知識やカウンセリングの技術が必要だと考えていました。そこで、この事業への参加をきっかけに、私自身、EOLケアについて学び、また、同じように専門知識を持つ仲間を育て、チームを組んで組織横断的に活動できる体制を作ろうと考えたんです」。會津医師の声かけでチームに加わった鈴木利恵看護師(ナーシングサポート室主査・リンパ浮腫療法士)はこう話す。「実際に介入を始めてみると、〈相談できてよかった>という声が多く、本当に必要な支援だと実感しています。大切なのは、いきなり人生の最期について問いかけないこと。主治医が話した医学的情報をわかりやすく補足しながら、少しずつ残された日々の治療や過ごし方に目を向けてもらうよう心がけています」。

ボックス(知ろう)1

 

 

今後のビジョンは〈相談員>を育て、
患者の思いを繋ぐ仕組みを、地域へ広げていくこと。

 0913春日井市民病院¥IMG_2813 同院は重篤な患者に高度な医療を提供する、急性期病院である。本来、治療が最優先の病院がEOLケアに力を入れるのはなぜだろうか。「一つには、がん患者さんが増え、しかもがんに対する治療法が多岐に広がってきたことがあると思います。がん治療の選択肢が増えたことにより、人生の最終段階の過ごし方もさまざまな道を選べるようになってきた。だからこそ、一人ひとりの人生に焦点を当てた、きめ細かいケアが求められるようになってきました。さらに、そのケアを地域に繋ぎ、がんと共に生きる患者さんを支えることが必要になってきたのです」と會津は説明する。
903011 同院が発起点となり、患者の思いを地域へ繋ぐために、同院は地域に向けたさまざまな取り組みを展開している。たとえば、患者が〈最期の日々は、在宅で過ごしたい>という場合、同院では患者や家族の思いを〈EOLケアサマリー>に詳しく記入し、在宅サイドの主治医や訪問看護師、施設の職員へ渡している。「サマリーはご本人の思いを在宅へ繋ぐ大切なもの。サマリーを読むと『患者さんとご家族の価値観がわかり、それを尊重した支援ができる』と在宅サイドの方々からも好評です。そんなふうに、地域みんなで患者さんの思いを繋いで、本人が〈自分の人生を生ききる>ことが私たちの願いです」と鈴木は言う。平成27年9月から平成28年1月までの同院のEOLケア実績は44件。そのうち25件は、退院先に患者の思いを繋いだという。
 さらに、このEOLケアの体制を地域に根づかせるために、同院では院内外の医療者を対象とした〈相談員>育成プログラムの研修もスタートした。「私たちが患者さんの思いを在宅へ繋いだり、反対に在宅から当院へ、患者さんの思いを繋いでもらう。お互いに密に情報交換しながら、地域の方々の人生の最終段階を支えていきたいと思います」(會津)。

ボックス(知ろう)2

 

column

コラム

●春日井市民病院が委託された厚生労働省の〈人生の最終段階における医療体制整備事業>は、人生の最終段階を迎えた患者と、その家族と医療従事者が話し合い、患者がその人らしい人生を全うするために、最善の医療とケアを提供する仕組みづくりをめざす事業である。

●平成26年度は10施設、平成27年度は春日井市民病院を含む、5つのモデル医療機関が公募で選定された。各医療機関では、厚労省の研修プログラムに参加して、EOLケアを実践できる相談員を養成。院内に、患者の相談に応えるEOLケアチームや倫理委員会などを設置して、患者の人生の最終段階を支える体制づくりを推進した。

●その2年間の成果を踏まえ、厚労省では平成28年度も同事業を継続。同年度は大学病院が事業実施者となり、意思決定支援教育プログラムを用いて、各地で研修会を実施。全国200の医療機関などで人生の最終段階における医療に関して、より充実した体制を整備することをめざしている。

 

backstage

バックステージ

治し支える医療の
要となるEOLケア。


●これまで多くの急性期病院の診療現場では、「治しましょう、頑張りましょう」と患者を励ましてきた。しかし、複数の疾患を抱える高齢患者の増加に伴い、〈治す医療>だけではなく、病気と共に生きる患者の生活を支えていく〈治し支える医療>が重要になってきた。春日井市民病院が挑戦するEOLケアは、そんな治し支える医療の一角を占める重要な取り組みである。

●高齢化の進む日本では、これから死亡者数も急増するだろう。その一方で、医学の進歩に伴い、治療法の選択肢のさらなる増加が予想される。同院はその行く手を見据え、まずは医療者が〈治すことだけに注力する>意識を変え、患者との対話を深め、それぞれの人生の物語に寄り添う医療に力を入れようとしている。同院がモデルケースとなり、〈患者の思いを繋ぐ>体制が地域に広がることを切に希望する。

 


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