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一人ひとりの生活や歓びを、みんなで共有できる。
そんな「風土」が、私を支えている。

近藤徳子/社会保険中京病院 皮膚・排泄ケア認定看護師


 

main皮膚・排泄ケアの認定看護師として活躍する近藤徳子看護師は、認定取得のため、以前勤めていた病院を6年で退職。その後、資格取得で得た高度な知識・技術を活かしたいと、専従看護師として働ける社会保険中京病院に入職した。今や同院に欠かせない存在となった彼女を支えているのは、同院に脈々と受け継がれる「風土」だった。

 

 

 

 


専従看護師の必要性を理解し、いち早く導入してきた社会保険中京病院。看護師を独りにしない組織横断的な支援が、イキイキと働く看護師を育む。


 

皮膚・排泄ケアの専従者として病院全体の看護を力強く支援。

110032 「患者さんを自分が変え、支えてあげられるという満足感がある。それが一番のやりがいですね」。社会保険中京病院の近藤徳子看護師は、自らの仕事をこのように話す。
 近藤が担当するのは、皮膚・排泄ケアだ。皮膚・排泄ケアには、人工肛門(ストーマ)に関する看護のほか、一般には「床ずれ」と呼ばれる「褥瘡(じょくそう)」、さらに糖尿病や人工透析患者などの足病変のケアなどがある。この分野のスペシャリストである皮膚・排泄ケア認定看護師として、さまざまな患者を支援するのが近藤の役目だ。
 平成17年、念願だった認定看護師の資格を取得した近藤は、皮膚・排泄ケア分野の専従看護師として同院に入職。現在は看護支援室に所属し、週1回の褥瘡回診のほか、フットケア外来、人工肛門のストーマ外来を行い患者を支援する一方、ケアに関する看護師からの相談依頼にも個別で対応。専門分野の知識を生かし、院内で働く看護師たちを力強くサポートしている。

人工肛門のケアを極めたい。職を辞して、認定取得へ。

110073 近藤が資格取得をめざしたのは、人工肛門の患者のケアを深めたいという強い思いからだ。きっかけは、看護師になって入職した、ある大学病院の外科病棟や外来での勤務。そこで人工肛門の患者をケアするなか、力不足を痛感する場面が少なからずあったという。「人工肛門は、患者さんに相当大きな苦痛を伴います。お腹から排泄物が出ること自体が生理的に受け付けない方もいますし、それが漏れてしまえば日常生活はままならなくなる。さらに、がんを患った方が大半ですから、患者さんの気持ちにどう寄り添うかも大事になります」。
 そうした体験を重ねて、近藤は人工肛門の患者のケアを深めたいと強く思うようになる。「人工肛門のケアは難しく、一般の看護師では手に負えない部分も多いです。それを体験した私自身、専門性を高め、患者さんはもちろん、ケアする看護師の両方を助けることができれば、という思いが強くなりました」と述懐する。
000 ただ、近藤がこう考えはじめた平成16年当時は、まだ認定看護師に対する世間的評価が乏しく、籍を置いていた病院でも「専門性を高めるよりも、何でもやれる看護師をめざすべきだ」という方針が取られていた。資格取得に向けた支援が何も無いばかりか、教育課程に進学するには病院を辞めざるを得ない。それでも近藤は挑戦を決意した。
 「受験を決めたのが9月で、試験は12月。通常の勤務を行いながら図書館に残って必死で勉強しました。当時は認定看護師への教育課程を持つ学校の数が少なく、入学倍率はおよそ7倍。人工肛門の経験は積んでいたものの、褥瘡などは素人同然。だから猛勉強しましたね。そんな努力の甲斐もあり、なんとか試験に合格、翌年から学校に通うことになりました」。
 進学が決まったものの、その後について不安を抱いた近藤は、就職活動を始める。ポイントはスト―マ造設を行っており、かつ、その分野の認定看護師がまだいない病院。さらに、看護師の「専従」という働き方を認めている病院である。
 社会保険中京病院は、そのすべてに合致した。すぐに電話をした近藤の話を聞いたのは、当時の看護局長。自分の思いを真っすぐに語る近藤に、看護局長は答えてくれた。「そういう人が欲しかった。一年後、待っています」。
 安心して教育課程に進んだ近藤だが、勉強期間中は孤独感を味わうことになる。「今、所属する病院がないため、自分の病院を分析する課題が出ても、協力してもらう相手がない。また、上司に相談するといった心の拠り所もありませんでした。本当に心細かったですね」。そんな苦労を乗り越え、皮膚・排泄ケア認定看護師の資格を取得。確かな自信を胸に、約束どおり社会保険中京病院に就職。今や同院に欠かせない看護師へと成長した。

専従看護師の重要性を理解し組織横断的に看護師をサポート。

110005 近藤が同院を職場に選んだ理由。その大きな要因は、「専従」という働き方にあった。以前勤務した病院では、病院を組織横断的に支援する専従看護師は存在しなかった。一方、社会保険中京病院では、専門に特化した看護師が必要、という先進的な考えをいち早く取り入れ、すでに専従の看護師を置く体制を導入していたのだ。
 社会保険中京病院で働き始め、すでに9年あまりが経つ近藤だが、「働きづらさを感じることはまったくない」と言い切る。「やりたいことを自由にやらせてくれるのが当院の魅力。上司は私が迷ったときなど、気軽に相談に乗ってくださいますし、同僚も皆協力してくれます。本当に快適な職場だと思いますね」。以前は月1回だったストーマ外来を毎週に変更し、平成22年度からはフットケア外来を開始。病院にとって必要と判断されれば、やりたいことを実現していける今の環境に心から満足している。
110068 近藤がこうした活躍ができる根底には、「看護師を決して孤独にしない」という同院の考え方がある。それを端的に表しているのが、「おめでとう」という言葉だと近藤は話す。
 「例えば、妊娠した看護師が出ると、以前働いていた職場では『欠員が出て周りの看護師が忙しくなる』という雰囲気がありました。でも、当院では『おめでとう!』と祝福される。当たり前ですが、そんな人間としての基本的な生活や歓びを大切にし、共有できるのが今の職場です。また、医師や技師といった職種の枠を超え、垣根なく話ができる風通しの良さも魅力ですね」。
 さらに、はにかみながら、「今の私があるのは、家族の存在も大きいですね。いつも私に温かく接してくれる家族には、いつも感謝しています」と近藤。彼女の活躍を支えているのは、家族であり、一緒に働く仲間であり、そして病院の風土なのだ。

地域とともに生きる病院として。その思いは今後も変わらない。

CIMG2629 「どんな患者さんでも分け隔てなく受け入れる。病気であればどんな人でも診る。そんな地域に密着した姿勢が、この病院の特長だと感じています」と話す近藤。社会保険庁の解体を受け、平成26年4月から新たな組織の下での再スタートが始まる同院だが、今も昔も変わらず地域の医療に貢献してきたというプライドは、今後も揺らぐことはない。
 絹川常郎病院長も「地域とともに生きる病院をめざして、より一層の努力をしていきたい」と話す。「中京病院は、いつでも地域に不可欠な病院であることをめざし、医療水準の高度化に全力を尽くしてきました。今後は、病院単独では存在できない時代になります。地域の医療・介護・福祉機関と連携し、継続ケアの視点で患者さん一人ひとりの幸せを紡いでいく。そんな地域と当院とのありようを真剣に考えていきたいと思います」(絹川病院長)。
 そうした同院で、より質の高い看護を実現するためにも、今後は組織のレベルアップが課題だと話す近藤。「看護局全体でのレベルアップを図るためにも、最近増えている中途採用の看護師向けの研修を充実させるなど、“教育制度の見直し”にも参加していきたいですね」。
 病院を訪れる患者やその家族、そして院内で働く職員も「確かな幸せ」を実感できる病院をめざして。社会保険中京病院の新たな船出は、もうすでに始まっている。


 

 

column

コラム

●社会保険中京病院は、昭和22年12月、社会保険の福祉施設として、被保険者の疾病治療と健康管理を行い、社会保険診療を模範的に実施する目的の下に開設された公的病院だ。その後、医療水準の高度化、専門性の深化、領域の拡充を進め、現在では、がん、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病、精神疾患の5疾病を中心に、名古屋市南東部、知多半島の一部をカバーする急性期病院として、確固たる地位を築き上げている。

●公的病院である同院では、開院当初から「病気であればどんな人でも受け入れる」という姿勢を貫いてきた。できる限り患者の思いや気持ちに応えることをモットーとし、地域の人々に寄り添いながら、60年以上にわたる歴史を刻み続けてきたのだ。今後、社会情勢や時代の流れによって医療のカタチがどれだけ変わろうとも、同院が掲げる「地域密着」の精神は、「誇るべき伝統」として連綿と受け継がれていくに違いない。

 

 

 

 

 

 

backstageバックステージ

●病棟で勤務する看護師にとって、患者の退院は、治療の一つの区切りであり、ゴールであるように思える。だが、患者にとって退院は、その後の生活のスタートラインにすぎない。大学卒業後、外科病棟で勤務してきた近藤看護師は、その後、外来に異動した際、自分の勘違いに改めて気付かされたという。「特に人工肛門を持っての生活は、退院後からが大変なのです。帰宅後に困って外来を訪れる患者さんを見て、それを初めて実感することができました」。

●病院での治療に区切りはあるが、病気に区切りはない。専門知識を持った近藤看護師のような存在が、入院時から患者の退院後を見据え、どう生活を支援していけばいいのかを考える。こうした継続ケアが今後より一層求められてくるはずだ。患者を地域で支える必要性が叫ばれる今、改めて退院後を見据えた医療・看護のあり方が問われている。

 


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