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看護を軸に
在宅まで繋ぐ。

 

 

豊橋市民病院


看護師同士が直接話し合い、
病院から在宅への
道筋を繋いでいく。

main

豊橋市民病院は、東三河地域をリードする高度急性期病院(治す病院)。一方の渥美病院は急性期病床を
中心に、地域包括ケア病床(※)と療養病床を併せ持つケアミックス病院(治し支える病院)。両院では、
看護師同士が密に連携し、豊橋市民病院での治療を終えた患者の転院、そして在宅までの道筋を繋いでいる。
※ 急性期治療を終えた患者や、在宅で急変した患者を受け入れ、在宅復帰を支援する病床。

 

 

 

 

 

豊橋市民病院から渥美病院へ。
スムーズな転院とその先にある在宅復帰をめざす。

916102 「受け入れをお願いしたいのは、肺がんの高齢患者さんです。当院で手術をして、今は化学療法を行っていますが、退院後も酸素吸入が必要になります。また、田原市に独り暮らしの方なので、病状が落ち着き、生活環境を整えてからでないと自宅に戻れません。当院を退院後、もうしばらく入院治療を続けながら、在宅復帰の準備をするのがいいと思うんですが…」。そんなふうに電話口に向かって話すのは、豊橋市民病院で退院支援・調整を担う伊藤惠子看護師(患者総合支援センター・師長)。電話の相手は、田原市(豊橋市に隣接)にある渥美病院で、転916157院患者の受け入れや退院支援・調整を担う市川公子看護師(地域連携室・地域医療連携課長)である。伊藤の話をひと通り聞いた市川は、患者本人の思いや離れて住む家族の意思を尋ねた。「ご本人は家に帰りたいという思いがあり、トイレは何とか自分で行えるものの、買い物に行くのは難しい状況で、自宅に戻ってからは生活援助が必要です。同じ市内に住む息子さんご夫婦は、その援助の一部を担えるという話でした」。それを聞き、市川は、患者が在宅に戻るにはどんな支援が必要か、どんな日常生活動作の訓練が必要か、おおまかな在宅復帰支援計画を頭の中で組み立てていった。こうした密度の濃い会話ができるのは、看護師同士ならではと言えるだろう。医師同士では治療の話になるし、医療ソーシャルワーカー同士では福祉の話が中心になる。しかし、看護師同士なら、医療の知識をベースに、在宅復帰支援まで話を展開することができる。「同じ看護師として、<患者さんを自宅に帰す>というゴールを共有しています。だから、患者さんの病状から背景にある生活まで、必要な情報をスムーズに交換できるんです」と市川は言う。
 伊藤が渥美病院に連絡したのは、同院が在宅復帰を支援する地域包括ケア病棟を持っているからだった。同院は地域の医療ニーズに応えるべく、いち早く(平成26年10月)、地域包括ケア病棟を開設していた。「渥美病院なら、生活に戻るまでの準備をじっくり進められ、『地元で暮らしたい』という患者さんの想いにも応えられます。それに、訪問看護ステーションもあるので、自宅に戻った後のケアもお願いできると考えました」と伊藤は話す。

ボックス1(知ろう)

 

 

<医療と生活>の両方の視点を持つ看護師が、
在宅復帰支援の<要>の役割を担う。

 014 退院支援・調整を担う看護師が窓口となり、スムーズな転院を支援し、在宅まで継続した医療・看護を提供していく。豊橋市民病院がこの看護師主導の退院調整に力を注ぐようになったのはなぜだろうか。「平均在院日数の短縮化の流れのなかで、まだ充分に回復しておらず、医療もケアも必要とする状態で退院せざるを得ない患者さんが増えたからだと思います。そういう患者さんを次のステージに繋ぐには、<医療と生活>という両方の視点が必要になります。その人が生活していくには、どんな医療・看護が必要で、どんな生活援助が必要か。それらを総合的にアセスメント(評価・分析)できる職種は、私たち看護師をおいて他にないと思います」と伊藤は説明する。
916069 現在、患者総合支援センターには、伊藤を含め、4名の退院調整看護師が所属し、1名が2病棟を担当している。基本業務は病棟からの退院調整の依頼に応えるカタチだが、決して待ちの姿勢ではない。「毎朝、救急外来の記録をチェックし、介入が必要になりそうな入院患者さんがいれば、こちらから病棟スタッフに声をかけています」と伊藤。入院した段階で、病状や介護者の有無などから、退院に支障をきたす可能性のある患者を把握することで、迅速な退院支援・調整をめざしているのだ。
 最後に、伊藤に今後のビジョンを聞いた。「来年から病棟ごとに専属の退院調整看護師などが配置され、体制が強化されます。それにともない、院内では、病棟看護師が退院調整看護師などと協力して、より積極的に退院支援に関わるよう指導していくつもりです。院外では、渥美病院さんの事例のような看護師同士の連携を、もっと増やしていきたいですね。地域の病院や施設、在宅の看護師同士が密に連携し、きめ細かく情報共有することで、病院から在宅まで切れ目のないサポートで繋いでいきたいと考えています」。

ボックス2(知ろう)

 

column

コラム

●近年、入退院支援と地域連携を効果的に進めるために、PFMという仕組みを導入する病院が増えている。PFMとは、ペイシェント・フロー・マネージメントの略称で、入院前から対象患者をスクリーニング(選別)し、個々の病状・生活状況などのアセスメント(評価・分析)を行い、適切な病床の提供から退院支援までを一貫して支援し、入院前から退院後まで切れ目のない医療を提供するシステムである。

●豊橋市民病院ではPFMを推進する部署として、平成22年、医療と福祉の支援サービスを集約させた「患者総合支援センター」を開設。同年より、看護師による退院支援・調整に着手し、PFMの取り組みを強化してきた。同センターでは退院調整看護師、医療ソーシャルワーカー、がん相談員、女性相談員、事務職員が所属。地域の医療機関や福祉関連機関との連携を図り、患者がスムーズに転院、または在宅に復帰し、退院後も安心して療養生活を送れるよう支援している。

 

backstage

バックステージ

医療を繋ぐ<結節点>に
求められる看護師の存在。


●看護師は、生活に軸足を置いた医療者である。医師は疾患を診るが、看護師は患者の症状を看て、背景にある生活を考える。そして、<医療と生活>の両面から、生活の質を維持できるように支援していく。

●近年、その看護師の強みをもっと活かし、看護師の役割を拡大させていこうという動きが医療界で見られるようになってきた。その一つが、退院支援・調整の領域だろう。高度急性期から急性期、回復期などの病院へ転院したり、施設や自宅へ戻っていく患者たち。その患者に提供される医療・看護が分断されないように繋ぐには、<医療と生活>の両方の視点が欠かせないのである。患者一人ひとりの思いを大切に、それぞれの療養環境を構築していこうとする退院調整看護師の挑戦が、さらに大きく広がっていくことを期待したい。

 


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