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病院を知ろう

名古屋を支える市民の大学病院
救急・災害医療から高度医療まで。

 

 

名古屋市立大学病院


市民に近い大学病院だからこそ、
見つめることができる未来がある。

main

社会が大きく変わる今、医療も大きく変わろうとしている。
そこでは、これまでのように<医学>だけからではなく、もっと多様な視点、柔軟な取り組みから、市民のニーズや信頼に応えていく必要がある。
名古屋市立大学病院(以下、名市大病院)は、高度先進医療に取り組みながら、市民の健康を支える使命を果たすべく、新たな大学病院の未来を描く。

 

 

 

 

 

三教授を中心に据え、救急医療を強化。

627076 平成27年4月、名市大病院の救命救急センターに、<診断と初期治療>を専門とする<救急科>が新設された。それまで同院では、救急部として救急患者を受け入れてきたが、救急部を一つの<科>として独立させ、救急科を窓口に、全診療科が集結する強力な救命救急体制を確立させたのである。
 この救急科の部長医師に就任したのが、同大学大学院に誕生した新講座<先進急性期医療学>に着任した3名の教授陣である。そのうちの一人、笹野 寛医師は麻酔・集中治療・救急医療において豊富な経験を持つと同時に、同院の臨床シミュレーションセンター長を兼任し、救命処置などのシミュレーション教育にも尽力している。もう一人、服部友紀医師も笹野医師と同じく、麻酔・集中治療・救急医療を専門とし、さらに日本DMAT(災害派遣医療チーム)隊員の資格を持ち、同院の災害医療を仲間とともに作り上げていく役割も担っている。松嶋麻子医師は、関西で複数の病院に勤務し、救急医療の第一線で活躍してきた経歴を持つ。県外で学んできた特徴を活かし、同院の救命救急に新風を吹き込む。
140097 三者三様の個性と強みを持つ部長医師のまとめ役を担うのは、救命救急センター長の間瀬光人医師(脳神経外科学教授)だ。「3人の先生が多様な視点を持ち込み、切磋琢磨しながら、後進の医師を育て、新しい救急を作り上げようとしています。現場は非常に活力が漲っていますね。また、救急に精通した先生方が窓口になることで、病院全体が救急に協力しようという求心力も高まりました」と手応えを語る。一般に、病院の救急外来では、研修医が最初に患者を診てから、上級医や救急科専門医に引き継ぐケースが多い。しかし、ここでは最初から3部長を中心とした専従救急医が中心となり、研修医を指導しながら初期診療を行う。それだけに診断力のレベルは極めて高く、緊急性のある疾患を決して見逃すことはない。

 

 

外科領域を充実させ手術室も拡張。

 023 名市大病院が力を入れるのは、救急医療の強化だけではない。ここ数年、さまざまな診療科・部門に亘り、人材の補強や体制の整備を図っている。
 その大きな柱が、外科領域の充実である。平成27年3月、新たな診療科として<形成外科>を開設。先天異常や病気、ケガによって生じた身体の一部の欠損や変形の治療にあたっている。また、<心臓血管外科>では、医師の増員を図り、成人の心臓血管手術を担当する専門チームを新たに結成。これまで得意としてきた小児の治療に加え、高齢化に伴い増加している成人の心・血管疾患に幅広く対応できる体制を整えた。この他、<消化器・呼吸器外科領域>に関しては、内視鏡部を<内視鏡医療センター>に改組し、患者の体に負担の少ない内視鏡治療に力を入れている。さらに、「乳腺外科」では、<乳がん治療・乳房再建センター>を設立。乳腺外科と形成外科の医師らがチームとなり、乳がん手術+乳房再建術を行っている。また、ハード面の整備として、現在、手術室の拡張工事も進めているところだ(平成29年3月完成予定:3室を増設)。
140048 こういった数々の戦略の陣頭指揮を執るのが、名市大病院の城 卓志病院長(医学研究科消化器・代謝内科学教授)である。城病院長は、「救急・災害医療と外科領域の充実を最重要課題」として、強いリーダーシップを発揮している。救急と並んで災害医療を挙げているのは、「愛知県災害拠点病院として万一の大地震に備える」目的があるという。「近い将来の発生が予測される南海トラフ巨大地震では、名古屋市南部が広範囲に津波の被害を受ける可能性があります。そのとき、当院が災害医療の最前線に立ち、被災した患者さんをスムーズに受け入れられるよう、平時の救急医療体制を充実させていく方針です」と話す。

 

 

高度急性期病院として市民のニーズに応えていく。

Plus顔写真 同院が今、こうした病院改革を推し進める理由はどこにあるのだろうか。城病院長は次のように話す。「昨今、地域医療が大きく変わるなかで、どんな病院をめざすべきか、という議論を重ねてきました。そもそも名市大病院は、医学教育・研究を含む高度先進医療に取り組む一方で、市民のための病院として、市民の医療ニーズに応える使命を持っています。その使命を果たすには、どうすればよいだろうか。その答えとして私たちが辿り着いたのが、<高度急性期医療の機能強化>だったのです」。
 現在、地域医療体制作りにおいては、病院が持つ病床(入院ベッド)を<高度急性期・急性期・回復期・慢性期>の4つに分けて役割分担し、病院完結型から地域完結型の医療提供体制140002への転換を進めている。そのなかで、同院は<高度急性期病院>として進む道を志向し、市民のニーズが高い救急医療や最先端の高度医療に注力することを決意したのである。その決意のベースには、名古屋市立東部医療センター、名古屋市立西部医療センターという2つの市民病院を視野に入れた総合的な戦略もある。「当院が高度先進医療に特化すると同時に、2つの市民病院が強力に連携し、一体となって必要な医療を提供し、名古屋市全体の医療機能の充実を図っていきたいと考えています」(城病院長)。

 

 

6学部7研究科を持つ強みを活かし、
教育・研修に取り組む。

112244 <臨床>の分野で思いきった改革を断行する名市大病院だが、大学病院にはそもそも<臨床・教育・研究>という3つの役割がある。「もちろん、教育・研究分野にも力を注ぎ、<臨床・教育・研究>の三本柱をともに強く育てていく」と、城病院長は決意を語る。
 教育については、医療系3学部(医学部、薬学部、看護学部)が協力して学生実習、卒後研修を行ってきたが、それを一歩進め、卒前・卒後教育の一体化による質の高い医療人の育成をめざしている。研究については、平成28年4月、愛知県国家戦略特別区域における保険外併用療養の特例対象医療機関(※)として認定を受け、先進医療の臨床研究をより迅速に進める環境も整った。ここから新しい医療を創造しようという気運が満ちている。
420303 城病院長に今後のビジョンを聞いた。「名市大病院の特徴は、6学部7研究科を持っていること。その特徴をさらに活かしていく計画です。たとえば、一昨年に医学部附属病院と芸術工学部等が協力し、病院の中央部門として設立した<医療デザイン研究センター>もその一つです。かつては病院の中に入ってこなかった工学系の人を医療現場に迎え、病院の中で医療とデザインを融合させることで、革新的な医療機器の開発に取り組んでいます。これは名市大病院だからできる、非常にユニークな研究開発のスタイルだと自負しています。今後は、工学系に留まらず、すべての学部生を病院の中に受け入れ、医療に関わるさまざまな人材を育てながら、そこから新しい医療を創出していきたいと考えています」。
 市民に最も近い大学病院ならではの目線と強みを発揮し、臨床、教育、研究の全領域で名市大にしかできない成長軌道を描いていく。名古屋市民230万人の期待と信頼に応え、名市大病院は独特な存在感を放つ。
※ 最先端の医療や適応外の医薬品の使用などの先進医療を実施する場合、速やかに評価を開始できるよう、先進医療の申請の審査期間を短縮する特例。

 


 

column

コラム

●名市大病院は、昭和6年、名古屋市民病院として誕生した。名市大病院となったのは、昭和25年。その基盤となる名古屋市立大学医学部は、昭和18年、全国初の市立の医学専門学校である女子高等医学専門学校としてスタートした経緯を持つ。

●名古屋市民の市民生活を守るところからスタートした組織と、それらを支える女性の医師を育てる組織という、2つのルーツを持つ。その生い立ちからでも、名市大病院が、健康な日常生活への視点をベースにした、市民のための大学病院であることが解る。

●現在では、地域の中核病院として特定機能病院、災害拠点病院、地域がん診療連携拠点病院、救命救急センター、総合周産期母子医療センターなど、数々の指定、認定を獲得。

●それらは、例えば救命救急センターは、それまで先人たちが築き守り続けてきた、名市大病院ならではの思いと機能を礎とし、さらに発展させたもの。点としての存在ではなく、長きに亘り創造してきた、大学病院としての存在自体を知らしめるものである。

 

backstage

バックステージ

●名市大病院には「名古屋市立大学医学部附属病院」と「名古屋市立大学病院」という2つの顔がある。一つは教育・研究機関(アカデミズム)としての顔、もう一つは地域市民に根ざした医療機関としての顔である。

●だからこそ持つ視野の広さが、人と、生活と、地域と、社会が交錯する<医療>というフィールドを最大限に活かし、医学のあり方、大学教育のあり方、さらには、地域のあり方まで見据え、新しい試みへの挑戦が可能となっている。

●そうした取り組みに、実はもう一つ必要なことがある。名古屋市民の理解だ。名市大病院に起こっている変化は、何が目的なのか、その成果は誰が享受できるのか。そうした理解が市民全体に浸透してこそ、名市大病院の明日への挑戦が生きていく。

●市民のための大学病院として歩み続ける名市大病院。その市民こそが、もっと同院の存在意義を考えることが大切ではないだろうか。

●最後に、現在の取り組みは<サクラ咲くプラン>として進行しているという。サクラが開花するときを大いに期待したい。

 


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