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市民生活の〈安心〉のために、
私たちがめざす公益性。

 

 

西尾市民病院


社会の変化に合わせて、
自治体病院の役割も変わらなければならない。

main

社会が求める病院のあるべき姿は、時代とともに変化する。
西尾市民病院は、その変化を機敏に受け止め、
「市民のための市民病院として、我々はどうあるべきか」を自問する。
自治体病院の新たな公益性(多くの人々の利益の増進に寄与すること)をめざす同院のビジョンを追った。

 

 

 

 

 

我々がやらなくては
西尾市民を守れないという覚悟。

C1__701077 西尾市民病院のビジョンに迫る前に、同院が位置する西三河南部西医療圏の現状を押さえておきたい。同医療圏は碧南、刈谷、安城、西尾、知立、高浜の6市から構成される。北部には二つの高度急性期病院があり、比較的潤沢な医療資源を抱えている。しかし、南東部すなわち西尾市に目を向けると、常勤医師を10名以上抱える病院は、同院ただ一つ。そしてその同院ですら、慢性的な医師不足に苦しんでいるのが現状である。西尾市は、医師も入院ベッド数も全国平均の半数以下という、圧倒的に医療資源の不足した地域なのだ。
 この厳しい状況下で、Plus顔写真_藤竹先生同院は年間3800台を超える救急搬送に対応している。医師たちは少ない人数でローテーションを組み、その医師たちを多職種がサポートしながら、病院全体で24時間365日の救急外来を堅持している。「当直は、月に3回くらい担当しています。その他に、病院からの緊急呼び出しに備える待機日が月に10回くらい。負担は大きいですが、急病で苦しんでいる患者さんをお断りすることはできませんから…」と語るのは、消化器外科医の藤竹信一(外科部長)である。
 また、医師不足は、救急だけでなく一般診療においても医師の負担増に繋がっている。というのも、近年は複数の疾患を持つ高齢患者が増加。主疾患の他に、別の疾患を同時に治療しなければならない場合も多い。そんなとき、潤沢に専門医が揃っていれば、医師同士の連携が図れるが、同院ではそうもいかない。医師たちは、自分の専門領域に加え、幅広い疾患に対応しなくてはならないのだ。Plus顔写真_和田先生
 こうした苦しい状況は続くが、「我々が頑張らなくては市民の皆さんの健康を守ることはできない、という危機感を多くの職員が持っています」と、乳腺外科医の和田応樹(外科部長)は語る。医療資源の少ない西尾市で、同院が救急やプライマリ・ケア(診療の初期段階で提供される総合的な医療)の領域を担わなくては、たちまち西尾市の医療は崩壊の危機に陥る。とくに今後、病院の機能分化が加速するなかで、近隣の高度急性期病院は、さらに重篤な患者の治療に特化していくと想定される。そうなればますます、同院のように、コモンディジーズ(高頻度で遭遇する日常的な疾患)をしっかり診療する病院の存在が必要不可欠となるだろう。

ボックス(知ろう)_1

 

 

市民病院に求められる〈次代の公益性〉を睨み、
同院は進化を続ける。

 Plus顔写真_禰宜田院長 少ない医師を補い、病院全体で地域医療を守ろうとする西尾市民病院。では同院はこれから、市民病院としてどんな役割を果たしていくのか。
 これまで自治体病院には、幅広い診療領域を網羅するラインナップの整備が求められてきた。しかし、医師不足の同院ではそれがかなわない。院長の禰宜田政隆は、「当院が今めざすべきは、すべての診療科で専門医療を追求することではない」と明言し、次のように続けた。「当院に足りない専門医療は、近隣の高度急性期病院と連携することでカバーし、私たちは、限られた医療資源を有効に活かして、プライマリ・ケアを確実に提供していこうと思います。同時に今後は、まだ医療が必要な状態で退院し、在宅療養を迫られる患者さんの増加が予想されます。そういった方々も含め、市民の皆さんがずっと安心して暮らしていけるよう支援することこそ、私たちが担うべき次代の公益性だと考えています」。
 〈市民の安心〉を実現するために、同院が具体的に構想しているのは、第一に、プライマリ・ケアの充実。比較的充足している看護師を活用し、医師の負担軽減を図りながら、診療機能を高めていく。次に、近隣の病院との連携強化。IT(情報技術)を活用して、同院と高度急性期病院が、患者の診療情報を安全に共有し、両院の医師や看護師同士が対話できる仕組みを作っていく。三番目に、在宅支援機能の強化。地域包括ケア病棟の活用を進め、在C2_2__MG_0227宅療養中の急変にも迅速に対応できる体制を整備する。さらに、摂食・嚥下障害などに精通した認定看護師を地域へ派遣し、在宅医療に携わる人々をサポートしていく考えだ。
 そして、こうした改革の実行を通じて、職員の意識を一つにまとめ、真の意味で〈市民のための市民病院〉づくりをめざす。「市民の安心を第一に、これからも弛むことなく病院改革を進めていきます」。禰宜田は強い口調でそう締めくくった。

ボックス(知ろう)_2

 

column

コラム

●西尾市民病院が位置する西三河南部西医療圏において、同院は三番目に救急搬送を多く受け入れている病院。一、二位を占めるのは、三次救急医療機関。同院は二次救急病院のトップとして、同医療圏で欠かすことのできない役割を果たしている。

●だが、この実績の陰には、職員たちの並々ならぬ努力がある。同院の救急外来に訪れる患者は、年間約1万8000人。少ない医師数で大勢の患者に対応するため、独歩で訪れた患者については、看護師が先に問診をして、病気やケガの重症度を判断してから、的確に医師へ繋ぐ体制を取っている。また、休日、夜間には非常勤医師の応援を頼むなどして、できる限り勤務医の負担を軽減し、救急医療を継続させようと努力しているのだ。

●現在、西尾市消防による救急搬送の60%以上を同院が受け入れている。その数字こそ、同院が地域になくてはならない存在であることを示しているといえるだろう。

 

backstage

バックステージ

5疾病5事業にとらわれない
新しい公益性の追求。


●そもそも自治体病院は、地域住民に対して5疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患)5事業(救急医療、災害医療、へき地医療、周産期医療、小児救急医療を含む小児医療)を中心に提供すること、そして、地域における基幹的な医療機関として、地域に必要な医療を安定的、かつ継続的に提供することをめざしてきた。

●しかし、病院を取り巻く医療政策の転換、慢性的な医師不足などから、自治体病院の多くがその公的な役割を果たすことができず、苦悶している。現状打破に必要なのは、思いきった思考の転換ではないだろうか。病院は、「自治体病院はかくあるべき」という思考を変え、新たな公益性を考える。地域住民も「自治体病院だから何でも診てほしい」と思わず、適切な利用を心がける。病院と住民が一緒になって、これからの時代に必要な自治体病院のあり方を模索すべきではないだろうか。

 


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