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病院を知ろう

地域の声を真剣に受け止め、
フレキシブルに対応する病院をめざす。

江南厚生病院


main「病気を治す」から「病気とともに生きる」。そうした時代における地域医療のセンター機能を果たすために。

昭和病院と愛北病院、2つの厚生連病院が統合し、平成20年5月、江南厚生病院は誕生した。33の診療科、684床の病床を持ち、地域医療を守るため、救急・急性期から療養期、緩和ケア、訪問看護などの在宅、さらに予防医療まで幅広くカバーしている。医療資源の限られたこの地域で、自院の持つ機能をいかに活用し、住民の生命と健康をいかに守るか。高齢社会を前に、地域の医療と介護・福祉が大きく変化するなか、同院のこれからを野木森剛院長(平成25年4月就任)に聞く。

地域で発生するあらゆる疾患に対応する、地域のセンター病院。

顔写真  江南厚生病院には二つの役割がある。一つは、「誰もがいつでもどこでも必要な医療を受けられること」を基本理念とする、愛知県厚生連8病院の一つとして、医療資源の乏しい郊外部に住む地域住民の健康・福祉を守るという役割。もう一つは、市民病院がない尾張北部地区(江南市、犬山市、岩倉市、丹羽郡扶桑町・大口町)で、地域の基幹病院として救急医療、小児・周産期、災害医療など、採算性を度外視し、地域医療を守るという役割だ。 
 この二つの役割を果たすため、課せられた使命は、地域で発生するあらゆる疾患に関し、地域で完結できるセンター病院として機能すること。基本方針として、野木森剛院長は、「コモンディジーズと言われる、多くの人がかかる一般的な疾患に対し、質の高い医療を提供」。一方で、「特殊な疾患については初期診断を徹底し、必要に応じて周辺や名古屋の専門病院へ送るといった臨機応変な対応」。そして、「進展する高齢社会を見つめ、当院だけではなく、地域の医療機関、介護・福祉施設、地域包括支援センターとも継続的に関係を結び、地域全体で住民の健康的な生活をカバーする体制づくり」と、三つを語る。それは、限られた医療資源を点ではなく線にし、さらに面にして地域のニーズに応えるということ。地域に密着して、住民が安心して暮らせる医療の提供をめざす、同院のあり方が明らかにされている。

 

急性期から在宅まで、幅広いニーズに対応できる、病院機能を備える。

031033032 江南厚生病院で特筆すべき点を述べよう。救急医療においては、救急病床30床を有し、24時間365日対応で、救急搬送患者の受け入れ数は、5780件(平成24年度)。よほどの特殊疾患以外は同院で治療を行い、実質的に尾張北部地区の救命救急センター的機能を発揮している。
 また、骨髄移植、化学療法などが可能な「血液細胞療法センター」、すべての脊椎疾患に対応できる「脊椎脊髄センター」、急性心筋梗塞、不安定狭心症に対する24時間体制での緊急治療や、心房細動、上室性頻拍症、心室性不整脈等の根治治療を積極的に行っている「循環器センター」、そして、NICU6床(新生児集中管理室)、GCU12床(回復治療室)を擁した「こども医療センター」、「地域周産期母子医療センター」など。一定領域に関しては、センター化というフレームにおいて、高度で、先端的な医療の提供に力を注ぐ。
 がん治療においては、放射線治療における最新の装置を装備するとともに、「外来化学療法センター」を設置。加えて、身体や心の症状の辛さを取り除くためのケアを専門とする「緩和ケア病棟(20床)」を持ち、「緩和ケア外来」も開設している。
 在宅医療支援機能に目を転ずると、「病診連携室」では、地元医師会と協力して地域医療ネットワークシステムを導入。地域の病院や診療所との間での情報交換をスムーズにし、シームレスな地域連携に力を注ぐ。また、江南市から委託を受け、高齢者の相談機関である「地域包括支援センター」を設置。介護保険サービスを受ける際の窓口となる「介護相談センター」、24時間対応の「訪問看護ステーション」も整備した。
 こうした事業の拡充に対して、野木森院長は「社会の変化とともに、医療・介護への期待は大きくなる一方です。地域の幅広い要望に応えられるよう、病院機能の充実を図っています」と語る。

 

高齢社会の医療に必要な病院のあり方を見つめて。

041 わが国では、平成27年には総人口の26・0%(3277万人)、およそ4人に1人が65歳以上になると見込まれている。「これからは、社会から求められる医療は大きく変わります。なぜなら、高齢者の場合、必ずしも病気が一つとは限らず、何か複合疾患を持っています。そうした患者さんには、臓器別の急性期医療だけでは対応できない。特定の臓器や疾患に限定す710086ることなく、幅広い視野で患者さんを診察し、適切に専門医に繋ぐ。換言すると、必要な専門医を活かすための初期診断能力を持つ総合医が不可欠です」(野木森院長)。
 だが、専門医指向が強い現在の日本では、総合医が足りない。野木森院長は、「幅広い知識を持ったベテラン医師が、若手研修医をフォローしながら初期診断をつけ、専門医に引き継ぐという方法をとっています。ただ、今後は総合医を自院で育成していきたい。そのためにはまず、研修医を指導する指導医が、幅広い初期診断に対応する指導力を、今以上に身につけることが重要です」。
 「そしてさらに」と野木森院長は言葉を続ける。「高齢になるとがんの発症率が高まります。つまり、がん自体がコモンディジーズ(多くの人がかかる一般的な疾患)になり、がんという慢性疾患を抱えながら、病気とともに生きていく方々が増加します。当然、それを支える環境が必要です」。
 がん患者は、病院での積極的治療が終わった段階で、在宅に戻る。江南厚生病院では、訪問看護の強化、診療所や介護施設などとの連携を一層深め、がん患者が、地域連携に支えられ、在宅で病気とともに生きていける環境づくりをめざしていく。

医療の基本は〈人〉。心から地域に信頼され、愛される病院をめざす。

042 710110「どんな時代がきても、そこに人が住んでいる限り医療は必要です。医療自体がどういう方向にシフトしても、今ある病院の機能・設備を活かして対応していく。当院の特長である柔軟性を活かし、形を変えながら地域医療を守っていきたい」と野木森院長。前述のとおり、急性期医療では高度化・先鋭化を図る一方で、地域の医療・介護・福祉との連携を強め、病気を治すだけでなく、病気を持ちながら生きていく患者の自立支援のために、病院がどうあるべきか考え続けている。
 そこで重要なのは、「人」だと野木森院長は言う。「医療は人が人を診るという特殊な世界。働く人の心が入っていないと成立しない」。医療は人である。これは前院長・加藤幸男医師が貫きとおした信念でもある。その<人>が、自らの力を最大限発揮できるよう、病院新築の際、働きやすさに重点を置いた設計に注力した。この環境の良さを活かし、例えば医師で言えば、将来の宝と言える研修医の教育に、指導医がもっと力を注ぐことが必要となろう。一方で、大学医学部・医科大学医局との関係を深め、継続的な医師の供給を受けることも大切だ。
 「江南厚生病院に行ってダメなら仕方がない。地域の方に本心からそう思ってもらえる病院になることが、めざすべき姿です」と野木森院長。ここまで作りあげてきた人と機能を最大限に活かし、時代の変化、地域のニーズに合わせ、しなやかに柔軟に形を変えていく。この地に人がいる限り、江南厚生病院の進化・変化は続く。

 


 


column

コラム

●厚生連設立のもととなった医療利用組合は、大正期、農民が自分たちの手で医療を確保するため、お金を持ち寄って設立された。大正8年に島根県青原村の産業組合で診療所を開設したのが始まりとされる。その後、こうした活動が医療利用組合運動として全国へ拡がり、各地で病院や診療所が開設。それらの病院が、戦後設立した厚生連に引き継がれた。「無医村を解消し、いつでもどこでも医療にかかれること」を理念に、医療資源の乏しい郊外部を中心に作られた厚生連病院は、公的病院として広く認知され、地域の市民病院的役割を果たしている病院が多い。

●JA愛知厚生連は、昭和23年、農協法に基づき県下JAの出資で設立した農業協同組合連合会。現在、県内8カ所の厚生連病院が活動をしている。県内各所の病院は、地域発展の経緯によりそれぞれの医療的事情を抱えている。そのため、JA愛知厚生連では「誰もが最善の医療を受けられる」ことをめざし、各地域での永続的な医療提供を可能にするため、人の派遣、金銭的な補填など、相互に助け合いながら経営を維持。江南厚生病院もまた、8病院と補い合いながらJA愛知厚生連の医療の一端を担う。

 

backstage

バックステージ

●日本における75歳以上人口の割合は現在10人に1人。2030年には5人に1人、2055年には4人に1人になると推計される。高齢化の進展とともに疾病構造は変化し、「治す医療」から「治し、支える医療」へと医療ニーズも変化してきている。そうした環境のなか、国は医療・介護の方向性を「病院完結型医療」から「地域連携型医療」へ、さらに医療と介護のシームレスな連携で高齢患者の日常を支える「地域包括ケア」とシフトしてきた。

●江南厚生病院では、地域包括支援センターを設置し、24時間対応の訪問看護ステーションを整備。地域の診療所や施設との連携を深め、在宅支援機能の強化に努めている。「今後は、急性期だけ診るという時代ではなくなる。高齢者が病気を持ちながらも自立して生活していくために、病院がどうあるべきかを考えなくてはならない」と野木森院長。退院後の在宅治療、看取りまでを視野に入れ、限られた医療資源を点から線にし、面にしていくことで、地域包括的な支援をめざしていく。

 


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