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病院を知ろう

知多半島医療圏は、私たちが守る。
職員たちの強い責任感と使命感が、
地域医療の揺るぎない基盤をつくる。

半田市立半田病院


main地域の医療機関、介護・福祉施設と“顔の見える”連携を結びつつ、
知多半島医療圏の最後の砦として機能していく。

知多半島は、半田市をはじめとした5市・5町からなる。
そのなかで、半田市立半田病院は、唯一の「救命救急センター」に指定されているほか、災害拠点病院(地域中核災害医療センター)、地域医療支援病院など数々の指定を受けている。
まさに、知多半島医療圏の中核病院。地域の医療・介護・福祉施設としっかり手を結び、地域住民の生活を守り続ける。

「あなたたちなら絶対にできる」。
災害医療の第一人者からもらった力強い応援メッセージ。

『救え! 22万人の命! その時、あなたは何を思い、どう動く』と題したポスターが、平成25年初夏、半田市内のあちこちに掲出された。これは半田市(半田市立半田病院)が主催した「災害対策特別講演会」の告知ポスターである。講演者として招かれたのは、東日本大震災において石巻の災害医療の司令塔として活躍し、全国にその名を馳せた宮城県災害医療コーディネーターの石井 正医師である。7月6日の講演会当日、石井医師は90分間にわたり、震災後の壮絶な闘いの日々を語り、聴衆は熱心に耳を傾けた。
 その後、半田市立半田病院の会議室に場所を移し、石井医師と同院職員との膝を突き合わせてのディスカッションが行われた。参加した職員は、著名な医師に臆することなく積極的に質問し、意見交換を行った。「初動の準備が何よりも大切」「どんな問題が起きても、解決するために必死に動くこと」「能力や仕事の範囲を自分で限定せず、やれることをやりなさい」——厳しい試練を乗り越えた石井医師の言葉は説得力があり、職員たちは大きな刺激を受けた。なかでも、皆の心を打ったのは、01「あなたたちなら絶対にできる。“医療人魂”を持って、災害医療に立ち向かえる」という力強い応援メッセージだった。その言葉を聞き、また職員たちの表情を見て、「この講演会を企画してよかった」と、同院の石田義博副院長は実感した。
 石井医師の言葉を裏付けるように、同院はかねてから災害拠点病院として精力的に活動してきた。東日本大震災の際は、DMAT(災害派遣医療チーム)や多数の災害支援ナースを派遣。また、今後発生が予測される東海・東南海地震に備え、災害訓練や診療材料の備蓄などにも余念がない。「東日本大震災の教訓を時間とともに風化させてはいけないという思いから、この講演会を企画しました。そういう姿勢も含めて、私たちに対し“絶対にできる”と言ってくださったのだとうれしく受け止めています」と石田副院長は語る。

 

災害医療も救急医療も私たちが最後の砦となる、という強い責任感。

IMG_1372 地域の中核災害医療センターとして、万一の災害に備える半田市立半田病院。東日本大震災後はとくに大地震への危機感を強く持ち、「行政の動きを待つよりも、自分たちで動かねば…」という思いから石田副院長ら同院の有志が集結。同じく災害拠点病院に指定されている知多厚生病院や、自衛隊など災害救援に関わる関係機関に働きかけて、昨年6月に「知多半島医療圏災害連携会議」を発足。災害医療に関わる実務者同士が顔を合わせ、災害時の具体的な対応策について熱心に討議している。
 こうした災害医療の取り組みのほか、同院は救命救急センター、地域医療支援病院などいくつもの役回りを担う。「災害医療についても、救急医療についても、この地域の最後の砦という意識でやっています。知多半島医療圏全域に責任を持つ病院として、地域の医療機関と深く連携し、さらに介護・福祉施設とも手を結び、地域に貢献したいという強い思いを職員みんなが共有しています」と石田副院長は話す。
 地域医療連携の活動は、救命救急センターの指定を受けた平成17年頃から活発化した。室長に山口三恵看護師を配し、地域の医療機関はもちろん、介護・福祉施設まで含めて密接な連携体制を構築。山口室長のアクティブな運営手腕から、「回復期リハビリテーション会議」「有床病院連携会」「介護施設との連携会」などを次々と立ち上げ、それぞれの分野の人たちと対話を深めてきた。
 このような連携の取り組みは、感染対策にも及ぶ。「知多半島医療圏感染対策連携会議」を組織し、他の医療機関と協力して、知多半島全体の感染対策のレベル向上をめざし、議論を重ねている。「当院の感染管理認定看護師が他の医療機関や関連施設から相談を受けることもしばしばあり、とても良い関係が築けています」と石田副院長は手応えを感じている。

 

人材の不足を、病院全体の不断の努力で乗り越えていく。

IMG_1391 しかし、同院が知多半島全域へ目を向け、活動を広げていこうとするほど、ネックとなる問題がある。それは、慢性的な人材不足だ。現在、同院の常勤医は、病床数499床に対して100人ほど。「理想的なマンパワーとしては、150人ほどの医師を確保したい」というのが石田副院長の切実な願いだ。医師は、原則として大学医学部・医科大学の医局から派遣されている。現状より多くの医師を確保するには、「この地域で求められる医療を全力で提供し、大学医学部・医科大学の医局に、当院が地域に必要な病院だと認めてもらうこと。そして、研修医をしっかり育て、将来を担う若い医師たちに選ばれる病院になっていくこと。そういった努力の積み重ねが、人材の確保に繋がっていくのだと思います」と石田副院長は語る。
IMG_7286 一方、看護師についても、充足しているとは言えない状況だ。同院の看護配置は、「10対1」(※)。高度急性期病床で望ましいとされる「7対1」には及ばず、勤務する看護師にとっては多忙な状況が続いているという。「重要なのは、看護師の負担を少しでも軽減し、いろいろな働き方を認めていくこと。たとえば、短時間の勤務を可能にするなどして、看護師の定着率を上げていきたいですね」と、同院看護局の白井麻希看護局長は語る。今以上に看護局がマネジメント力・労務管理力を身につけ、看護師ごとに違うさまざまな要望に応えられる柔軟な労働環境を提供していく。この地道な努力が、離職者を減らし、あらゆる世代に対応した「本当のワークライフバランス」、ひいては充実した看護を実現させる鍵だと言えるだろう。

※ 10対1看護配置とは、患者10人に対し看護師1人が看護する看護体制のこと。

新しい「知多半島医療圏」のビジョンに向けて、今、動き出す。

IMG_1417 人材不足の課題を抱えつつも、同院はこれからの知多半島医療圏のあるべき姿を見据え、6、7年後には、新病院の建築を予定している。そのとき、重要になるものは何だろうか。「地域の医療機関との機能分担と連携の強化」だと、石田副院長は語る。「知多半島には現在、各所に要となる公立病院、公的病院、民間病院がありますが、それらが互いに競争するのではなく、有機的に結びつき、この地域により良い医療を提供していくのが望ましいと考えています」。
 たとえば、同院は現在、499床の病床を抱えているが、それをある程度縮小してでも、高度急性期医療に特化していくことも視野に構想中だという。高度急性期での治療を終えた患者はそれぞれの病状などに適した医療機関へ引き継ぎ、さらに、地域医療連携室が、介護・福祉施設、在宅へと繋げるコーディネートを行っていく。反対に、一刻を争う重篤な患者、治療の難しい患者は、最後の砦として責任を持って引き受ける。限られた地域の医療資源を活かしながら、全体の要とも言うべき「センター機能」を担っていこうとしている。
IMG_7330 「幸い、知多半島は三方を海に囲まれているせいか、とても仲間意識が強い土地柄です。医療・介護・福祉の垣根が低く、それぞれの分野の担当者同士で、本当に良好なコミュニケーションがとれています」と石田副院長は語る。こうした「顔の見える」関係が、地域の医療・介護・福祉資源を有効に活用するシステムを作る上で、大きな力になるだろう。
 めざすのは、知多半島に住む住民一人ひとりに、より良い医療や介護・福祉サービスを届けること。そのために、同院はこれからも「顔の見える仲間」とともに課題を一つひとつ解決し、新たな道を切り拓いていく決意だ。

 


 

column

コラム

●半田市立半田病院の職員に共通するもの。それは、皆が同じ方向を向いて、地域のために頑張ろうと言うポジティブな気質だ。「確かに、皆がいいと思ったことは自然と実現できてしまう、不思議な空気感がありますね」と石田副院長もうなずく。

00●この明るいエネルギーはどこからきているのだろう。「やはり中根藤七院長の存在が大きいのではないか」と石田副院長は分析する。「いい提案をすれば、院長はほぼ賛成してくださいます。また、若い職員にも気軽に声をかけ、院内の隅々まで目配りができる方。その人間的な魅力が、職員の心を惹きつけていますし、私も院長のもとで働けることを幸せに感じています」。良きリーダーのもと、全員が結束して、高い志を持って地域医療に貢献していく。この統率のとれた組織こそが、実は同院の隠れた強みなのかもしれない。

 

backstage

バックステージ

●半田市立半田病院は、半田市を設立母体とする自治体病院である。また知多半島にある唯一の救命救急センターでもあり、5市・5町からなる知多半島医療圏全体をカバーし、守るべきエリアは実に広い。設立母体である自治体の行政圏と、実際に行う診療圏と行う点から考えると、そこには大きなギャップがある。

●かつては市町村ごとに病院を作り、それぞれの行政の財源で「わがまちの病院」を支えていくのが一般的だった。しかし、半田市立半田病院が責任を負う診療圏から見ても、その考え方はもはや過去のものというべきだろう。そうではなく、もっと広い視点から、地域の限られた医療資源を適正に配置していくことが必要だ。地域にある病院は設立母体の違いに関わらず、互いに役割を分担し、連携していかねばならない。各市町村よりもっと広域な都道府県が、その先導役を担い、積極的に采配を振るっていく必要があるのではないだろうか。

 

 


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