4,780 views

病院を知ろう

その人らしい生活を取り戻すための
リハビリテーションという医療。

鵜飼リハビリテーション病院


main患者自身が、持てる最大限の力で「生きていく」ために、
チームスタッフと患者が、全力で目標に向かう。
提供するのは、「本物」のリハビリテーション。

平成12年、医療法人珪山会鵜飼病院から回復期リハビリテーション病棟が独立し、鵜飼リハビリテーション病院が誕生した。
平成23年に新築移転した新病院は「病院らしくない病院」をコンセプトに設計されており、明るく開放的な、高いアメニティが特徴的だ。
愛知県における本格的なリハビリテーション医療の先駆けとして、全国的にも高い評価を得ている同院。
その追求する「本物」のリハビリテーション、そしてその先に見据える地域医療の姿を追った。

病院での生活すべてがリハビリの時間。

_MG_9265「鵜飼リハビリテーション病院は、患者さんにゆっくり療養していただくための病院ではありません」――医療ソーシャルワーカー、河合秀樹はそう語る。「ここは、障害を負った患者さんに、新しい生活のため、最大限の機能回復をめざすリハビリテーションに取り組んでいただく病院です。そのため、スタッフはときには患者さんに厳しく接し、患者さんと一緒に目標を追っていきます」。
 そうした方針は、患者を「見守る」姿勢にも表れている。「当院では、身の周りの動作など、リハビリでできるようになったことは、病棟の生活でも実践してもらい、見守るようにしています」。同院では、1日につき最大3時間のリハビリ訓練を受けることができる。しかし、1日のなかで、リハビリ以外の時間をどのように過ごすかが、その効果を高める大きな分かれ目だ。だから、患者を手助けしすぎて過介助にならないよう、自分でできることは、どんどん自分でやってもらう。言わば、病棟での生活も含めた24時間すべてが、リハビリの時間となっているのだ。
 「今、辛くても、『自分の力でできること』を一つでも多くして、より早くご自宅に帰ることが、患者さんの一番の幸せだと思います。『鵜飼リハビリテーション病院だからこそ、自分らしい生活を取り戻せた』と思っていただけるような、厳しさと温かさの感じられる病院でありたいと思います」。

 

 

医療としてのリハビリテーションを実践するための豊富な人員とチーム教育。

00 同院の入院患者のうち、8割を占めているのは脳卒中患者だ。重症度の高い患者が多いなか、全体の約8割が、退院後、在宅への復帰を果たしている。高い在宅復帰率を可能にしているのは一体何なのか。
 「当院の特色は、やはり『リハビリそのものの量』ですね」。1日最大3時間、医療保険最大適用のリハビリを提供。そしてそれを支えているのは、同院のリハビリスタッフの豊富さだ。理学療法士51名、作業療法士39名、言語聴覚士18名、総勢108名(平成25年7月現在)もの人員を確保しているからこそ、充実したリハビリの提供が可能となっている。
_H2H9597 それと同時に重視しているのは、患者に対するチームでのアプローチだ。医師、リハビリスタッフ、看護師、看護助手、医療ソーシャルワーカーなど、患者を取り巻く各職種が、それぞれの観点から意見を交わし、それを調和させる。何を最終的な目標とするか、そのために何が必要か、現段階での進行状況はどうかといった、チームの意思統一や情報共有を行うことが、各職種の持つスキルを活かした、最大限効果的なリハビリの提供を可能にする。
 さらに、「そうしたチーム医療において重要なのは、『システム』と『パッション』です」と河合は言う。システムとは、患者にアプローチする際の具体的な方法論。スタンダードな手法をマニュアル化するとともに、それをきちんと実行し活かせているか、どこを改善すべきか常に確認する。パッションとは、鵜飼リハビリテーション病院のスタッフとして、より強く患者のことを思いやる精神的なあり方だ。患者第一の理念のもとに、常に患者のことを慮る姿勢をすべてのスタッフが受け継いでいく。この両輪が揃って、初めて本当の意味で患者を支えることができると同院では考えている。

 

最先端のリハビリテーションを名古屋に持ち帰りたい。

626055「当院のこうした現在の姿は、石川誠先生から学んだところがとても大きい」と鵜飼泰光院長は語る。石川誠医師は、いち早くリハビリテーションの重要性に着目し、回復期リハビリテーション病棟の創設を提唱してきた、脳神経外科医・リハビリテーション科医だ。日本におけるこの分野の草分け的存在であり、元プロ野球監督長嶋茂雄氏の主治医としても知られている。
 平成6年、石川医師が院長を務め、先進的なリハビリテーションの実践で注目を集めていた、高知県の近森リハビリテーション病院を見学した鵜飼院長は驚く。入院患者は、朝起きたら自分で選んだ服に着替え、就寝時以外は寝間着を着ない。ベッドではなく食堂で食事し、排泄は可能な限りおむつではなくトイレで行う。それに対して、当時、鵜飼リハビリテーション病院の前身である鵜飼病院の有り様はそうではなかった。「1日40分リハビリをしても、病棟に戻ると患者さんは何もかも介助してもらっていた。今思えば過介助でしたね」。
626063 その違いは、治療におけるリハビリテーションの位置づけだった。「近森が行っていたのは、治療の一環としてきちんと組み込まれ、機能回復を生活の再建に結びつけるリハビリでした。一方、当時の鵜飼病院には、その効果がどの程度表れているかを検証し、患者の持つ残存能力を、いかに活かして自立した生活に繋いでいくかという発想が欠けていた。言わば、リハビリは入院治療のおまけのようなものでした」。
 近森リハビリテーション病院に感銘を受けた鵜飼院長は、鵜飼病院でリハビリ病棟を作り、その実践を決意。そのためにまず、病棟のスタッフ30名全員に、自分の目で直接近森リハビリテーション病院を見て学ばせた。その8年後、石川医師が東京に初台リハビリテーション病院を創設した際も、開院後1年を経た鵜飼リハビリテーション病院のスタッフを順番に送り出し、自院が進むべき方向性、めざすべきリハビリテーションのあり方を全員に浸透させた。さらに、平成18年からは、直接石川医師から指導を受けるようになった。「リハビリの質は勿論ですが、何よりスタッフのモチベーションが大きく高まりましたね」(鵜飼院長)。

 

地域の生活のなかでのリハビリテーションの実現に向けて。

11 東海地区トップクラスのリハビリテーション病院として、確かな地位を築いてきた鵜飼リハビリテーション病院が、今後めざすものは何か。その問いに対して医療法人珪山会の理事長でもある鵜飼院長が語るのは、法人の持つ医療機能を組み合わせ、かつ高度急性期病院や診療所などの地域の医療機関と連携していく「地域包括ケアの構築」だ。
 鵜飼院長の描く構想は三つの機能で構成される。まず一つ目の機能は、法人内で一般病床・療養型病床を有する鵜飼病院が、地域におけるゲートの役割を果たすことだ。「地域の診療所と連携しながら鵜飼病院で初期診断を行います。そこで高度急性期病院に送る必要性の有無を判断して対応できれば、診療所の先生や高度急性期病院の負担を大きく減らすことができます」。626090そして二つ目が、質の高いリハビリテーションの機能。鵜飼リハビリテーション病院が、高度急性期の治療が終わった患者を受け入れ、リハビリテーションを通じて、きちんと地域に返す役割を果たす。そして最後の三つ目が、退院後のフォローという機能だ。在宅患者の生活環境の評価や機能維持・回復を、法人内のデイケアや訪問看護、訪問リハビリテーションが担い、疾病治療や健康管理を診療所の医師に担ってもらう。こうした三つの機能を循環させることにより、地域全体で患者の在宅生活を支えていくことが可能になる。
 今後、高齢者が在宅で自立して生活することの重要性が増していくなか、地域の未来を見据えて、地域と法人が持つ医療機能をフル活用し、ハイブリッド化していく医療法人珪山会。そのなかで鵜飼リハビリテーション病院は、ますますこの地に欠かすことのできない柱として機能していくことだろう。

 


 

column

 

コラム

●医療法人珪山会は中部リハビリテーション専門学校と中部看護専門学校、グループ法人である学校法人珪山学園は日本聴能言語福祉学院と日本医療福祉専門学校を擁し、この地に多くの医療者を輩出してきた。これらの教育機関と、珪山会が運営する医療機関との連携により、医療現場に密着した教育が実践されている。

●昭和57年、愛知県で2番目の理学療法士養成校として開校した中部リハビリテーション専門学校の卒業生は今や1600名にも上り、愛知県内の理学療法士の23%を占めている(平成23年時点)。

●同校の同窓会「同友会」は、会員の親睦・連帯のみならず、医療者としての知識・技術の更なる向上をめざし、学会報告などの活発な活動を行っている。

 

 

backstage

バックステージ●病院機能分化が進む現在の日本の医療において、急性期治療を終えた患者は、次の治療段階へ向け退院もしくは転院が促される傾向にある。それに対し、最後まで同じ病院にいさせて欲しいと希望する患者も少なくない。

●しかし、急性期病院での入院生活を続けることが、必ずしも患者にとってベストであるとは言えない。回復期の段階では、リハビリテーションに特化した施設で積極的にリハビリテーションを行うことが望ましい。

●また、緊急・重篤な状態を指す急性期の治療期間の目安は約14日間とされる。回復期に移るべき患者で病床が塞がれば、その分新たな患者を受け入れることができず、急性期病院の本来の機能を発揮できなくなってしまうのだ。

●各領域ごとの医療機関の役割に対する患者や家族の理解が、地域医療、ひいては自らの健康を守ることに繋がると言えるだろう。

 

 


4,780 views