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病院を知ろう

地域の医療機関を繋ぎ、
知多半島すべての人に、最適な医療を提供する。

 

 

半田市立半田病院


main壁があれば壁を崩し、溝があれば溝を埋める。「地域医療連携室」は、半島すべてに視野を広げた活動を今日も続ける。

半田市立半田病院は、知多半島唯一の救命救急センターを有し、高度急性期医療を担う知多半島医療圏の中心的存在である。現在は、知多半島全域の医療機関が一つの病院のように機能するために、「顔の見える関係」を築きつつある同院だが、その中核となっている「地域医療連携室」の活動をレポートした。

二次医療圏のネットワーク構築をめざす。

70030 半田市立半田病院の正面玄関を入ると、すぐ左手に「地域医療連携室(以下、連携室と表記)」がある。病院を訪れた誰にでもすぐ分かる場所だ。同院の開設は昭和24年。今日では、半田市に留まらず、知多半島医療圏全域を見据えた医療を展開する同院において、その象徴ともいえるのが連携室である。
 そもそも連携室が設けられたのは、平成20年。当時、同院はすでに救命救急センター、地域中核災害医療センターの指定を受け、高度な急性期病院という役割を担っていた。だが実態は、平均入院日数24日、後方支援病院(回復期、療養期等の病床)への入院待機患者数50名/月と、高度急性期病院としてアクティビティは悪く、その一方で、「断らない救急」を守るため、重症患者比率が増加の一途を辿るなど、バランスの悪さが目立っていた。そのため、知多半島医療圏の医療資源を最大限有効に活用し、患者の流れをよりスムーズにするという目的のもと、連携室はスタートした。
70092 「まずは退院支援から始めた」と言うのは、連携室開設当初から室長として活躍する山口三恵看護師である。地域の医療機関一軒一軒に直接電話をかける、あるいは出向いて話をするなど、連携の輪を広げていった。その地道な活動の積み重ねにより、現在では、医療機関同士の一対一の連携に留まらず、シームレス連携会や、回復期リハビリ連携会議などを運営するとともに、薬剤師会や半田市医師会のバックアップの約束を得るに至っている。
 結果、現在では平均入院日数12日、待機患者数10名/月など、5年前とは大きな差。「地域完結型医療を少しは実践できていますが、こうなってきたのも、連携してくださっている地域医療機関のおかげです。私はただ壁があったら何とか崩し、溝があったら何とか埋めてきただけです」と山口室長は微笑む。昨年は老人保健施設に訪問したが、その際には、平成23年より連携室部長となった大塚泰郎医師が同行することで、施設の実態把握や連携強化に繋がったという。「紙面だけでは伝わらないことが、直接話すことで共有できます」と大塚医師。まさに「顔が見える連携」を一つひとつ積み重ねている連携室である。山口室長がめざすのは、医療機関だけではなく、介護や福祉、さらには行政を巻き込んだ、より強固な二次医療圏のネットワーク構築であるという。

 

 

三方が海という、閉鎖的な条件を乗り越えるエンジン。

70117 同院のある知多半島は、三方を海に囲まれた特殊な医療圏である。言葉は悪いが、閉鎖的な条件を抱えた医療圏だ。その意味するところは、住民にとって、隣りの医療圏に行って病院を受診する、という行為が簡単に取れないこと。半島内の医療機関を、利用せざるを得ないのである。
 そうした条件を前提にすると、さらに、今日の地域医療が地域完結型を前提に成り立っていることをも考え合わせると、住民にとっては、半島内に医療のすべてが揃っていることが安心に繋がる。
 地域完結型とは、高度急性期・一般急性期・亜急性期・回復期・療養期の医療機関、そして、診療所が連携し、患者のそのときどきの病状に合わせ、適切な医療を提供することで、あたかも地域が一つの病院のように機能することをいう。高齢社会である今日においては、さらにそこに、介護や福祉の施設が結びつき、地域全体でネットワークが構築されていることが理想だ。
 こうした知多半島において、半田病院は、半島唯一の救命救急センターであり、高度な急性期病院として位置づいている。すなわち、半田市の公的医療機関という枠を超えて、半島全域の基幹病院であることが求められる。その期待を受けて、平成23年には地域医療支援病院としての承認も受け、より一層、地域(半島)の医療全体の核としての機能発揮を期待されるようになった。そのエンジンとして位置づいているのが、連携室である。

 

医師の意識と目線が、地域連携を促進させる。

70136 山口室長は、同院の地域連携が進展したのは、大塚医師が連携室部長(内科系担当)として就任したことが大きいという。その理由の一つは、連携先の医師との会話である。実際に転医先を探すといった実働は、連携室の看護師とソーシャルワーカーが行う。だが、高度急性期後の治療について、また、高齢者で複合的な疾患がある場合などは、転医先の医師との連携が不可欠だ。しかし、地域では医師の専門領域の偏在や、すべての疾患を総合的に診ることができる医師の不足がネックとなっている。そのため転医先の医師が決まらず、事態が進まないという状況も少なからずあるという。それを乗り超えるには、医師同士での患者の情報交換や意見交換、あるいは協力が必要であるが、大塚医師が直接転医先の医師に働きかけることで、病院あるいは診療所の医師との連携が、以前よりスムーズにいくようになったという。
70159 もう一つの理由は、院内の医師やスタッフに対する退院支援へのアプローチである。「医師は、在宅医療に関する情報を持たないことが多かった」と山口室長。大塚医師も、「患者情報を転医先へ引き継ぐのは医師である、という意識が低く、方法も持たなかった」と言う。そのため大塚医師は、1週間に1回、各病棟で退院支援カンファレンスを実施。連携室職員やソーシャルワーカーとともに、医師や病棟スタッフと一緒になって、高度急性期後の患者の転医先について検討することで、入院直後から退院支援を見つめるという意識を広めた。その結果、平均在院日数の短縮が可能となり、後方支援病院への待機患者数も半減。退院支援が功を奏しているという。

 

適切な医療を受けるために、住民の理解が重要。

Plus顔写真 地域連携に関して、内科系担当の大塚医師とともに、外科系担当として尽力する石田義博副院長に、同院の地域連携について今後の展望を語ってもらおう。「連携室では、当院だけのことではなく、知多半島全体の医療を、どのように調和のとれたものにしていくか、という意識を持っています。換言すると、半島全体の医療の流れに責任を持とうといった意識です。例えば、当院の救命救急センターには、重症患者さんをはじめ、比較的軽症の患者さんも多数搬送されてきます。それを、患者の重症度や看護必要度に応じて、地域の医療機関の特徴を充分活かしながら対応していくことが、限られた医療資源の有効活用に繋がると考えます。そのためには、病院群のなかで役割分担を明確にすることが必要です。つまり半島にある病院間で、率直かつ親密な話し合いのもとに、円滑な協力関係を築くことが大切と考えています」。
 さらに石田副院長の言葉は続く。「そうした病院の役割分担を、地域住民の皆さんに正しく理解していただけるよう、適正な情報発信をしっかり行っていかなくてはいけません。すなわち、当院は半田市民のみの病院ではなく、半島全部の住民のための病院であること。限りある医療資源を有効活用するために、内容や経過に応じて適切な医療機関で治療を受けていただくこと。そうしたことをご理解いただきたいですね。
 いずれにしても、連携室のマンパワー充実が必要です。連携室職員が今以上に積極的に活動することは、イコール、当院がめざす地域連携の実現に繋がると思います」。
 山口連携室長は言う。「決して連携室だけが、連携を考えているわけではありません。院内の各現場から沸き起こってきた要望を、調整する組織づくりの真ん中にいるだけです。それをさらに広げるためにも、これからはもっと外に向かって働きかけをしていきたい」。

 


 

columnコラム

●地域連携の枠組みを知多半島全域に広げるには、疾患別管理型の連携が必要といえる。すなわち、それぞれの疾患別に治療の標準化を図り、治療のステージが変わっても、同じスケールで快復の時間軸に沿った医療支援を行うことである。

●そのとき不可欠なのは、疾患を継続的に診る眼、すなわち医師の存在である。高度急性期での治療方針を、次のステージを担う医師に明確に伝え、さらにその先へと繋ぐための要といえよう。

●そうした医師には、患者を疾患だけではなく、家族や生活をはじめとする社会背景をも見つめた、総合性のあるマネジメント能力が求められる。

●総合性のある視線を持ち、患者を全人的に診る医師。それは今日の医療界で、高度急性期、療養期など、領域を問わず求められている存在だ。現在、同院では大塚医師がその役割を担っているが、その機能をより拡大する、すなわち確保、育成が同院にとっても重要となっていく。

 

backstage

バックステージ

●本文でも紹介のとおり、知多半島医療圏で地域完結型医療をめざすためには、「知多半島の各エリアで核となる半田病院を含む4つの病院が中心となり、お互いに良い連携を取る必要がある」と石田副院長は言う。検査機器の有効活用や、診療科の医師の応援など病院同士のメリットを高め、あたかも一つの病院であるかのように機能すれば、知多半島の住民が、適切なタイミングで適切な治療を受けることが可能となる。「知多半島医療圏における医療連携が成り立てば、地域医療の理想的なモデルケースにもなり得るのではないでしょうか」と石田副院長は話す。

●その医療連携に、今後さらに加速度を増す高齢社会を見つめ、介護や福祉関係事業所との結びつきも不可欠となる。ここでも山口連携室長をはじめとする同院連携室は、地道に、そして確実に確かな関係づくりを進めていくことであろう。

 

 


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