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病院を知ろう

最高水準の医療機能を得て、新たなステージが始まる。

 

 

愛知医科大学病院


main10年間、地道な努力を続けてきた病院の姿が、今、大きく変わる。すべてにおいて最先端。妥協のない最高レベルの病院をめざして。

2014年5月の新病院の開設まで半年に迫った愛知医科大学病院。病院の未来図を大きく変えるような今回のビッグプロジェクト、その大きなテーマのひとつが、「医療機能の充実」だ。手術室の大幅な増加、最先端の検査機器の導入、細部にまで考え尽くされた動線の数々…。その大幅なハードの刷新からは、「一流」をめざす同院の決意が見えてくる。

 

ICUと手術室を中心に大幅に医療機能を充実。

90028 2014年5月の開院に向け、新病院の建設が大詰めを迎えつつある愛知医科大学病院。半世紀に一度というビッグプロジェクトも、いよいよ佳境に差しかかってきた。
 今回の新病院建設のテーマのひとつが、「医療機能の充実」だ。そのなかでもコアとなるのが、「ICU(集中治療室)」と「手術室」の機能強化である。
 全診療科を対象とした総合集中治療室「G(ジェネラル)ICU」(以後、GICUとする)だ。現在は手術を終えた患者は、SICU(外科系集中治療室)で一部の重篤な患者のみ集中管理している。それぞれの病棟では医師や看護師が術後の患者と一般病棟の患者の両方を診るような形をとっており、当然ながら医師や看護師に大きな負担がかかっていた。しかし今回、この「GICU」を28床設けたことで、術後と院内発生の重篤な患者をICU付きの看護師が2対1(患者2人に対して、看護師1人の比率)で管理する体制が整う。「医師、看護師の負担を減らすことは、術後の患者さん、重篤な患者さんを守るということに繋がっていきます」と、新病院建設委員長の佐藤啓二教授は話す。
 さらに、新たに集中リハビリテーションを行う病棟も設置される。手術を終えた急性期段階の患者はここに移り、機能回復に向けた訓練を開始することになる。それは時間とともに失われる機能をなるべく最小限にすることで、できるだけ早い社会復帰をめざし、従来の回復期リハビリテーション病棟よりも早い段階から集中的にリハビリテーションを行うのだ。
 一方、手術室も12室から19室へと大幅に数を増やす。新たに「ハイブリッド手術室」を設け、検査をしながら手術ができる体制を整え、さらには内視鏡下手術や手術支援ロボット<ダヴィンチ>を使うなど、低侵襲の時代に即した手術機能も備える。GICUや集中リハビリテーションを行う病棟の新設と併せ、「いかに患者に早く社会復帰をしてもらうか」という発想の下、大胆な機能強化を図る予定だ。

 

 

ICUと手術室を活かすため院内の動線を見直し、最先端の検査設備を導入。

上 ICUと手術室の機能強化を図る一方で、これらを最大限に活用するために、動線を徹底的に見直しているのが新病院の大きな特長だ。
 4階のICU、5階の手術室・GICUへは、高度救命救急センターからベッドと麻酔器が両方載るほどの大型エレベーターでスムーズに垂直移動できる。また、CT、MRIなどの検査室は5階にあり、手術室から平行移動で迅速な検査が可能。さらに、術後の管理を行うGICUを手術室と同じ階に設けることで、最短時間で患者を移動できる環境も整えている。
 入院治療を行う病棟では、「ヒト・モノ・情報が表に出ない」という新しい発想が取り入れられている。患者の動線とは別にバックヤードや職員用のエレベーター、物流用のエレベーターを設け、余計なヒト・モノ・情報に触れることなく、患者が快適な時間を過ごせるのが特長だ。
 通院治療においても、各診療科の外来を別の階に分け、立体駐車場からダイレクトにアクセスできるようにし、プライバシーの問題や感染症のリスクに対応する。例えば、産婦人科と小児科は他の診療科と別の階に設け、立体駐車場から平行移動して互いに接触することなく診察できるようにした。外来空間は、常に感染症の危険にさらされる場所だ。そのため、目的別に分けて受診できる構造にし、できる限りリスクを回避できるように考えられている。

下

 見直しによって高められた救急や外来の診断機能。それを支えるものとして導入されるのが高度医療機器だ。全身を一度に画像診断できる「PET―CT」、より短時間で高精度の画像を抽出できる「3・0テスラMRI」、超高速撮影を行うことで息止めが難しい患者でも広範囲を撮影できる「2管球CT」を採用。これらにより、撮影に要する時間が飛躍的に短縮され、患者の被爆量も軽減、息止めが難しい子どもなども容易に検査できる。佐藤教授も、「今までとは全然レベルが違います。救急に役立つ有益な情報を迅速に提供してくれるはずです」と期待する。

 

ハードの限界まで。忸怩たる思いから努力を重ねてきた10年間。

_H3612 他の大学病院と比較してハード面が脆弱なうえ、新病院建設の話もなかなか前に進まなかった愛知医科大学病院。そんな状況下でも、職員たちは地道な努力で実績を積み上げてきた。平成13年度から平成22年度までの10年間で、新入院患者数は年間1万1853人から1万7807人へと50・2%増加、平均在院日数は26・0日から13・7日と12・3日短縮し、手術件数も年間6734件から8848件へと31・4%増加した。平成15年から導入されたDPC(診断群分類包括評価)対象病院の基準に従いながら、業務効率化や経営改善をしてきた証だ。
 だが、努力に反比例するように、従来のハードはいよいよ限界に達する。なかでもICUと手術室を取り巻く環境は、すぐにでも改善が必要な状況だった。ICU系の病床が救急用しかなく、院内で重症化した患者のために、救急用のICUを使わざるを得ない。また、現状の12の手術室では、これ以上の手術に対応できない状態だった。
 今回のICUと手術室をコアにした医療機能の大胆な見直し、大幅なスケールアップの背景には、病院全体で取り組んできた「努力の10年間」があるのだ。

 

誰もがプライドを持てるような「一流」の大学病院をめざす。

Plus顔写真 新病院建設を契機に充実が図られる臨床の現場。これは大学病院としての教育や研究にも大きな波及効果を生むことになる。
 新病院では一次・二次救急にも対応したプライマリケアセンターが拡大整備される。これは単に救急を担うだけでなく、研修医教育、学生教育の場としても大きな役割を果たす。さらに病院情報システムとしてシンクライアント化(情報を端末ではなく、院内サーバーに保管)された電子カルテは、新たに学生教育用を展開する予定だ。これにより、カルテを見ながら、何を考え、どんなオーダーを出せばいいのかといった実践に即した教育が可能になるという。
 さらに、研究分野でも3・0テスラMRIや2管球CTなどの新たな機器導入により、診療から由来した「研究の種」が確実に増えていく。
 「臨床をきっかけに正のスパイラルを生み出していく。そのツールが新病院だと考えています。だから中途半端ではいけない。最先端の医療環境が整備され、そこにヒトや研究が集まってくる。そんな流れをしっかりと創り上げていきたいですね」。佐藤教授の決意の根底には、「病院を生まれ変わらせる」という明確な意思がある。新病院の建設はあくまでゴールではなく、ここからがスタートなのだ。
 開院まで半年近くに迫った今、佐藤教授は確かな手ごたえを感じ始めている。「新病院建設にあたり、無駄なお金を使わずに最先端の医療環境を整備しようと、事務職員を中心にスタッフ全員が努力をしてきた。そのなかで意識の変化を強烈に感じています」。大きな目標に向かうプロセスのなかで、すでに人が育ち、変化へのうねりは確実に大きくなっている。「愛知医科大学病院は、きっと一流の大学病院になりますよ」。佐藤教授は自信に満ちた表情でそう語った。

 


 

column

コラム

●愛知医科大学病院では、以前から積極的に先進医療に取り組んでいる。先進医療とは、厚生労働大臣から承認を受けた大学病院などの限られた医療機関のみで行われる最新の医療行為のこと。同院では現在、活性化リンパ球を用いた先進的がん免疫細胞療法、腹腔鏡下子宮体がん根治手術など、数多くの先進医療を実践。こうしたなかで、新たな医療技術の確立に注力している。

●新病院建設における臨床機能の強化。これにより、同院には最先端の医療環境が整備されることになる。検査機器などもより高度な設備が導入されることで、研究のための「種」も確実に増えていくだろう。大学病院として新たな医療技術の研究に熱心に取り組み続けてきた同院。今回の新病院の建設は、病院としての機能の充実だけでなく、「研究の場」としても大きな変化をもたらすきっかけになりそうだ。

 

backstage

バックステージ

●愛知医科大学は、高度医療を提供する病院として厚生労働大臣が承認した特定機能病院である。この特定機能病院には、教育・研究の場という側面がある一方で、地域の医療機関では手に負えない医療に貢献するという大きな役目がある。日常的に自院を利用する患者だけでなく、広域の医療圏に貢献することを宿命づけられた病院なのだ。だからこそ、今回の新病院建設においても、最先端の医療機器を備え、患者の細かな動線にまで配慮した、最高水準の医療機能をめざしている。

●大学病院はある意味で地域医療に影響を与える存在だ。自院を実際に訪れる患者がたとえ1万人だとしても、その高度医療を必要とする潜在的な患者の数は、それ以上、且つ広域にわたる。だからこそ、素晴らしい医療機能を備えても、地域との繋がりを欠き単独で存在していては意味がない。電子カルテや検査画像の情報共有を進め、いかに地域の医療機関と連携し、多くの人々の医療に貢献していくのか。この「繋がり」こそが今後の課題となるだろう。

 


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