THE ZOOM 〜東濃・可児地域〜 編集協力:岐阜県立多治見病院/土岐市立総合病院/東濃厚生病院/市立恵那病院/総合病院中津川市民病院/国民健康保険坂下病院/可児とうのう病院

トップ見出し

表紙


 

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東濃・可児地域では、地域を構成する各市に公立・公的病院が存在し、
これまでそれぞれの病院が、広域な地域を支えてきた。
しかし、高齢化が加速する今日、
単独の病院で地域医療を守り続けることが難しくなっている。
誰もが安心して暮らせる明日のために、
新たな地域医療モデルの創造をめざして、今、病院間の対話が、そして連携が、動き出した。
東濃医療圏イラスト

住民が安心して暮らすことができる、
活力ある地域づくりのために。

地域の活性化実現のための
前提としての地域医療。

多治見市街 東濃・可児地域は、岐阜県の東南に位置し、かつては関東甲信越と関西を結ぶ交通の要衝として栄えてきた。そして近年では、平成17年(2005年)に東海環状自動車道が開通。さらに、平成39年(2027年)に予定されるリニア中央新幹線新駅が開設されれば、自動車産業の集積地である愛知県、三河地方へはもちろん、首都圏や関西圏へのアクセスが劇的に向上する。このことにより、地域の産業の再生や活性化が大きく期待され、官民挙げたさまざまな取り組みがなされている。 
 こうした可能性を取り込み、地域の活性化を実現するために、不可欠なもの。それは地域住民の日々の生活であり、それを支える地域医療の充実ではないだろうか。だが実は、その地域医療自体が、大きな危機に直面している。本紙では、それぞれの医療機関がどのように危機を乗り越え、生活を支えようとしているかをレポートする。

 

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東濃・可児地域の地域医療が
抱える課題とは。

3P_左上 東濃・可児地域の地域医療は今、二つの大きな問題に直面している。一つは、急速に進行する人口減少と高齢化だ。東濃・可児地域の大部分を占める東濃医療圏の医療需要と、介護需要の将来統計を示した右のグラフを見てほしい。東濃医療圏の人口は既に減り始めているにもかかわらず、急速な高齢化によって、医療需要は平成32年(2020年)頃まで、介護需要は長期的に伸び続けることがわかるだろう。
 もう一つは、医師や看護師といった医療資源が、他の地域に比して非常に少ない点だ。殊に医師については、各病院で慢性的な不足が続いており、診療科によっては、閉鎖を余儀なくされるケースも出てきている。
 すなわち、限られた医療資源で、今後、増え続ける医療・介護需要をカバーする。その問題解決には、これまでとは異なる新しい地域医療モデルの創出が、必要不可欠となってくる。そうした視点で、東濃・可児地域は、今後、いかなる変化を遂げるべきか。<生活><連携><教育>という三点から追いかけてみる。

グラフ

 

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地域ページ 
東濃・可児地域は、他の地域に比して人口減少と高齢化の波が早く押し寄せている。
 高齢社会においては、さまざまな病気や障害を抱えながらも、日常は在宅で、悪くなったら一時入院をするといった生活が一般的になる。そのとき重要になるのが、生活のなかで高齢者を支える仕組みと、いざというときに速やかに適切な医療へと繋ぐ機能だ。
 これまでの地域医療は、<病気を治す>医療に力点が置かれてきた。だがこれからは、<治し、生活を支える>医療への質的な転換が必要になる。病気の完治だけではなく、安心な暮らしを支えること。すなわち、今までのように、専門特化した医療だけを追い求めるのではなく、もっと全人的な、そして、一人ひとりの生活を理解した医療こそが、求められる時代に変わっていく。
 そのためには、いかに病院・診療所・在宅支援・介護系施設、そして行政が一体となるか。また、医療に携わる多職種が<生活を支える>という視点を共有するか。その実践が求められている。


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140715中津川市民病院_242 東濃・可児地域は、少ない医療資源で、広範な地域の生活を守ることが求められる。
 今後の高齢化に伴う医療・介護需要の増加を考えたとき、今まで以上に、効率的な医療提供体制の確立が必要である。それは、地域の医療機関が機能の重複を避け、役割を分担し、お互いを補完しながら、高度急性期、急性期、回復期、慢性期と、生活への復帰をめざし、切れ目なく医療を繋ぐことに他ならない。
図 重要になるのは、各市で中核的医療を提供する公立・公的病院の存在である。これらの病院が地域の病院、診療所や在宅・介護系の施設と連携し、二次救急やコモンディジーズ(頻回に発症する疾患)へ確実に対応する。また、高度な治療が必要な疾患については、的確な初期診断の後、三次医療を担う岐阜県立多治見病院や、疾患によっては、その治療を得意とする病院へ繋ぐ。そして、専門的な治療が終了した後は、また各病院が生活に戻る支援を引き受ける。このような連携が、高度に滞りなく実践される。また、必要に応じて病院相互に支援し合う。そうしたネットワークの形成こそが必要になっている。



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研修医教育 
東濃・可児地域は、深刻な<医師不足>という課題に直面している。一方で、地域医療や、そこで必要とされる医師を育てる臨床教育のあり方自体が、今、少子高齢社会への対応を迫られ、大きな転換点にある。
 視点を変えれば、東濃・可児地域は、今後、日本全体で課題となる少子高齢化の先進地区であり、<生活の視点>と<連携の高度化>を取り込んだ、地域医療と教育システムのモデル地区となり得る可能性がある。
 但し、医師不足は教育機能の弱さと表裏一体だ。指導医が不足し、診療科が欠ける病院では、満足な臨床教育を行うことは難しい。そこで、各病院が個別に教育システムを作るのではなく、それぞれの得意分野を活かした、教育のネットワークを病院群で構築し、研修医がそのなかを動く仕組みを作る。そうなれば、次代を担う人材育成の場と機会を、地域全体で提供することができるのではないか。そして、こうした先進的な教育システムを軸に、医師を集め、地域に残していくことで、<医師不足>という大きな課題の解決に、大きく前進することができるのではないだろうか。


 

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地域住民を守る病院長の決意のメッセージ。

岐阜県立多治見病院 院長 原田 明生 院長_県立多治見

 東濃・可児地域の基幹病院として、地域で頻回に発生する疾患へ確実に対応するとともに、救急・高度急性期、周産期、がん医療などの分野において、地域のなかで当院でしかできない医療の高度化を図ります。そして、今、進み始めている病院間の対話をさらに深県立多治見病院_外観め、全国のモデルとなるような医療連携体制を構築し、皆さまが地域で安心して生活するための〈健康と生命を守る〉基盤を創り上げます。

 


土岐市立総合病院 院長 伊藤 昭宏 院長_土岐市立総合

 土岐市、瑞浪市を中心に、脳血管疾患、肝臓疾患や糖尿病の診療能力という強みを活かしつつ、東濃厚生病院、岐阜県立多治見病院と役割分担・連携をしながら、土岐市立総合病院_外観地域医療を支えていきます。また、急性期を終えた患者さんを受け入れ、生活へと繋ぐ機能を強化することで、より生活者に近い病院づくりをめざします。



東濃厚生病院 院長 塚本 英人院長_東濃厚生

 今後の地域医療を見据えたとき、当院としては、近隣の医療機関と役割分担を明確化し、連携を強化していく必要性を感じています。その先で、救急・東濃厚生病院_外観急性期医療から予防医療まで、瑞浪市、土岐市を中心とした東濃中部エリアに必要とされる医療を、地域のなかで完結できる体制をめざします。

 

 

市立恵那病院 院長 浅野 雅嘉院長_市立恵那

 当院は、平成28年11月に新病院を開設し、救急、産科、透析、検診などの医療機能を強化します。新病院を基軸市立恵那病院_外観に、地域医療振興協会の持つ全国ネットワーク、地域医療機関や住民との地域ネットワークを活かし、恵那市、中津川市を中心とした住民一人ひとりにとって最適な医療の提供をめざします。

 

 

総合病院中津川市民病院 院長 安藤 秀男 院長_中津川市民

 当院は、東濃東部の中核病院として、ドクターカーや地域包括ケア病棟の導入など、次代を見据えた病院づくりを進めてきました。今後、地域の医療は地域中津川市民病院_外観で守る時代を迎えるなかで、自院の機能強化はもちろん、地域連携を深め、東濃東部が一つの病院のように機能できる体制づくりを追い求めます。

 

 

国民健康保険坂下病院 院長 酒井 雄三 院長_国保坂下

 中津川市と長野県木曽南部において、中津川市民病院を中心とした地域医療機関との連携を強化していきます。そして、当院の持つ、急性期機能、訪問看護・訪国民健康保険坂下病院_外観問リハビリテーション機能、併設する介護老人保健施設や健康管理センターをフル活用し、生活を支えるための包括的な医療・ケアを提供していきます。

 

可児とうのう病院 院長 岸田 喜彦 院長_可児とうのう

 中濃医療圏の最南端に位置する当院は、岐阜県立多治見病院をはじめ、東濃医療圏の病院と関係が深く、医療圏とい可児とうのう病院_外観う枠を超えた地域医療連携体制の構築が必要となります。そのなかで、急性期病棟・地域包括ケア病棟など、当院の機能を活かし、高度医療と地域を結ぶハブとしての役割を果たしていきます。

 

 

推進会議見出し▶利害関係を超えた、患者本位の地域医療を創る︎。

 上記のように、今、東濃・可児地域では、病院同士が互いに役割分担をし、連携を強化しようとする機運が高まっている。その一つのきっかけとなったのが〈東濃・可児地域病病連携推進会議〉(以下〈病病連携会議〉)だ。
 この〈病病連携会議〉は、東濃・可児地域の各市で中心的役割を果たす8病院(岐阜県立多治見病院、多治見市民病院、土岐市立総合病院、東濃厚生病院、市立恵那病院、総合病院中津川市民病院、国民健康保険坂下病院、可児とうのう病院)の院長および事務長が一堂に会し、地域医療に関する情報共有や討議を行う場。かねてから「東濃・可児地域の病院同士が、定期的に顔を合わせて話し合える機会を持ちたい」との思いを抱いていた岐阜県立多治見病院の原田明生院長が、約2年前、7病院に参加を呼びかけ、全病院がそれに応じる形で実現したものである。
 第1回が平成26年6月4日に開催されて以降、平成28年6月16日の第5回まで、年2回のペースで、実施されてきた〈病病連携会議〉。そのなかでは、各病院の現状報告に始まり、役割分担と連携強化に向けた協議、医療制度改革への対応、医師・研修医の確保対策などさまざまな議題が話し合われてきた。
 回を重ねるにつれ、院長同士がお互いの思いを共有し、腹を割って本音で話せる関係が構築されてきたという。
 国が医療制度改革を進め、役割分担と連携に基づく地域完結型の医療が求められる時代においては、地域医療機関がお互いの機能・役割を知り、競合ではなく共同関係を築くことが必要になる。まして、医師や看護師といった医療資源が限られる東濃・可児地域においては、互いの強み・弱みまで理解し、補完し合うことで、効率的な医療提供体制を構築していかなければならない。
 〈病病連携会議〉は、まさにその処方箋といえる。それぞれの病院が「何ができて何ができないか」、利害関係を超えて本音で伝える。そのことで、得意とする専門領域をお互いに活かしつつ、高度急性期・急性期機能、急性期を脱した患者を在宅に戻す機能、在宅で状態が悪くなった患者をまた受け入れる機能などにおいて、役割分担を明確化し、連携のなかで地域住民に不足のない医療を提供することが可能となるのだ。多治見橋
 原田院長は語る。「医療資源が限られている地域でも、医療機関が固く〈連携〉することで、住民が安心できる医療を実現できます。今は、院長・事務長レベルでの関係ですが、今後は、各診療科の医師や看護師などがそれぞれの領域で対話を始め、地域全体が一つの病院のように機能できる地域医療を創り上げていければと考えています」。

 


 

4見出し

〈地域包括ケアシステム〉の構築に向けて

裏表紙_写真 超高齢社会における医療・介護需要の増加を見据え、限られた医療・介護資源で効率的な医療を提供するため、わが国の地域医療においては、入院中心から、在宅(自宅、施設)中心へ、療養の場が移行しつつある。そして、その実現に向け、一人暮らしでも、介護が必要であっても、住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けるための仕組みとして、「医療・介護・予防・生活支援・住まい」が一体になった、〈地域包括ケアシステム〉の構築がめざされている。
 こうした背景のもと、ここ東濃・可児地域においても、各地域の医師会と行政が中心となり、病院や診療所といった医療機関をはじめ、医療、介護、福祉に関わるさまざまな組織、そして、関わる人々が一体となる仕組みづくりを進めている。地域住民が安心して暮らし続けられる環境を作るために、それぞれがどのような思いで活動しているのか、4医師会長からのメッセージを掲載したい。

多治見市医師会  会長 加納 忠行 氏

貴重な医療資源を活かし、安心して生活が営める地域へ。医師会長_多治見市

 多治見市は、東濃・可児地域のなかで、比較的医療資源が充実しています。岐阜県立多治見病院を中心に、多治見市民病院や民間病院、そして診療所が役割分担し、医療を提供しています。今後は、こうした医療機能や、市内5カ所にある地域包括支援センターの相談機能、介護予防機能を活かしつつ、多職種の連携体制を強化し、市民が安心して生活できる地域を作っていきます。

 

土岐医師会  会長 中島 均 氏

24時間365日対応できる多職種連携チームの構築をめざして。医師会長_土岐

 高齢化の進む今後は、我々開業医もさらに全人的な医療に注力し、地域医療のゲートキーパーとしての役割を強化していかなければなりません。そして、病院から地域の民生委員まで、医療・介護・福祉に関わる幅広い人々との連携を強化し、24時間365日地域住民の生活を支え続けることのできる、多職種連携チームの構築をめざします。

 

恵那医師会  会長 中川 俊郎 氏

在宅療養への理解を促し、支える仕組みを作る。医師会長_恵那

 今後の地域医療では、在宅で療養する方が増加していきます。当会は訪問看護、訪問介護と連携しながら、在宅診療や看取りに注力し、病院には、療養中の急性増悪時はもちろん、ご家族が介護に疲れた場合の一時的患者受入などをお願いすることで、在宅療養を支えていきます。そして、市民に対する啓発活動を通じ、在宅療養に対する理解を高めていければと思います。

 

可児医師会  会長 熊谷 豊一 氏

持てる機能を活かし、生活のなかで、住民を支える。医師会長_可児

 当会の地域は東西に長く、東と西では地域特性が大きく異なります。そのなかで、殊に名古屋市のベッドタウンである可児市西部では、高齢化による独居老人の増加などが顕在化しています。今後は、各診療所や、当会の持つ訪問看護機能を最大活用し、多職種連携を深めることで、見守りを含め、生活のなかへ積極的に入っていく医療・介護を実現できればと考えます。

 

 


 

|Back Stage|


医療過疎地域の活路となる〈連携〉。
住民が、職員が理解し、参加してこそ、本当の医療連携となる。


 今日、医学は進化の一途を辿り、医療はますます高度化している。しかしながら、誰もがその恩恵を享受できているかというと、実はそうではない。医療過疎と呼ばれる地域があるのだ。
 東濃・可児地域がまさにその一つ。広いエリアを、少ない病院が、必死に地域住民のための医療提供に努めている。しかし、従来のままでは、最早成立しないことを、本文で紹介した。このエリアでは、〈連携〉が、地域医療の活路なのである。
 そのために始まった、病院長たちの〈東濃・可児地域病病連携推進会議〉。これは〈今後は東濃・可児地域の8病院がしっかりと手を結ぶ〉という、住民への宣言である。
 その宣言が仕組みとして定着するには、二つのことが大切だ。一つは、各病院の職員がその重要性を認識し、自らの行動に反映すること。そしてもう一つは、地域住民の理解。自分が住む地域の病院を賢く利用する。確かに高度医療は他地域にもある。だが、治療後の生活を考えたとき、本当にそれでよいのかどうか。生活への目線を持つ地元の病院が、より大きな安心をもたらすのではないか。
 共同戦線を張って次代に対応する〈医療連携〉。この大きな変化が、東濃・可児地域の医療を活性化する起爆剤となることを願う。

 


Special Thanks to

 

株式会社TYK

株式会社バローホールディングス

株式会社伊藤商会

ヤマカ株式会社

恵北ビル管理株式会社

ニチイ学館

医療法人社団浩養会 老人介護保健施設メモリアル光陽

大垣共立銀行

岐阜信用金庫

東濃信用金庫

岐建・板垣特定建設工事共同体

昭和建物管理株式会社

SBSロジコム株式会社

富士通株式会社

日清医療食品株式会社

日本ステリ株式会社

東濃鉄道株式会社

中京学院大学

株式会社トーカイ

たんぽぽ薬局株式会社

前畑株式会社

丸理印刷株式会社

リコージャパン株式会社

うらら調剤薬局

エール調剤薬局

はなの木薬局

三菱地所・サイモン株式会社 土岐プレミアムアウトレット

恵那防災株式会社

株式会社丸天産業

株式会社東海メディカルプロダクツ

フクダ電子三岐販売株式会社

一般社団法人 恵那歯科医師会

一般社団法人 可児歯科医師会

一般社団法人 中津川歯科医師会

株式会社ビー・エム・エル

株式会社中日サンクリーン

株式会社ソラスト

TOTO株式会社

ワタキューセイモア株式会社


 

発行日:2016年7月31日(日) 中日新聞朝刊