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すべての外科医を支援する“神の手”。
岐阜県総合医療センターが決断したダ・ヴィンチという道具がもたらすイノベーション。

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Episode 01 /

手術支援ロボットにより、人間の目や手では不可能な手術が実現できるように。


岐阜総合差し替え画像.jpg 高度な外科手術は、熟練の医師にしかできない――。今、そんな医療現場の常識を、ある医療機器が変えようとしている。その医療機器の名前は、手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ(da Vinci)」だ。
 この「ダ・ヴィンチ」は、アメリカで平成12年に開発された医療機器で、すでに欧米を中心に2000台近くが稼働、通常診療として多くの手術が行われている。日本でも平成21年11月に薬事法上の承認が下り、医療機器としての製造・販売が開始されている。
 「ダ・ヴィンチ」を用いた手術では、医師がロボットを操作しながら手術を行う。本体はロボット部分、操作部分、モニター部分で構成されており、ロボット部分には術者の手の役割を担う3本のアームと内視鏡用のアームの合計4本が装着されている。術者は箱型の操作部内に映る高解像度の3D内視鏡画像を見ながら、左右2本のコントローラーでアームを遠隔操作して手術を行う。
 「ダ・ヴィンチ」の大きな特長は、「高解像度の3Dモニター」、「自由自在に動くアーム」、「手ぶれ補正機能」の3つだ。従来の腹腔鏡手術では2D画像で手術を行わなければならなかったが、「ダ・ヴィンチ」では高解像度の3D内視鏡画像を見ながら手術を行える。立体的な画像になることで、より直観的に画像が認識できるのが利点だ。また、「ダ・ヴィンチ」のアームには人間の手よりも多くの関節部分があるため、人間の手では不可能な曲げ方やひねり方も可能。さらに、術者の手ぶれを自動補正する機能が備わっているため、正確かつ微細な操作を行うこともできる。

Episode 02 /

高解像度の3D画像が術者の指導や育成にも貢献。

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 従来の開腹手術では、どうしても視覚では見えない部分が出てしまい、術者が臓器などを手で触れて確認する“触覚”での判断が重要だった。ただ、触覚での判断は、実際に手で触れてみないと学習ができない。そのため、地道な経験の積み重ねと、ある種の感覚がものを言う“職人芸”の世界だった。今までの名医が“神の手を持つ”と言われたのは、メスや縫合などの技術のみならず、この触覚に頼る判断能力が手術を大きく左右していたからなのだ。
 ただ、「ダ・ヴィンチ」を用いた手術では、こうした従来の手術の常識が一変してしまう。「ダ・ヴィンチ」のモニターに映し出される高解像度の3D内視鏡画像は、肉眼で判断するより精度が高く、正確に確認・判断できる。しかも、腹腔鏡手術のように奥行きがなく距離感がなかった2D画像ではなく、立体的でリアルな視野で手術を実施できるため、腹腔鏡手術の経験が少ない医師でもスムーズに手術を行うことができるのだ。
 また、「ダ・ヴィンチ」の導入は、手術を行う医師の育成にも大きく貢献する。従来の手術では、判断技術の習得にも触覚による経験の積み重ねが必要であった。一方、「ダ・ヴィンチ」による手術では、熟練の医師が行った手術の画像を共有化することで、術者と同じ判断能力を養うことができる。教育や経験のスピードが格段に向上することにつながるのだ。
 さらに、「ダ・ヴィンチ」の手術は、術者の負担の軽減にも大きな役割を果たす。従来の腹腔鏡手術では、フットスイッチを踏みながら手術を行うため、片足に近い状態が4時間以上続くことになる。術者への体力的な負担は相当なものだ。「ダ・ヴィンチ」では、常に座った状態で手術を行え、緊張から来る手の震えも手ぶれ補正機能で抑えられる。こうした術者への身体的負担の軽減は、事故や判断ミスを予防することになり、患者へのメリットも大きい。

Episode 03 /

切る・縛るなどの技術ではなく「判断力」や「思考力」が手術の優劣を決める時代が来る。


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 今年10月に「ダ・ヴィンチ」の導入を決めた岐阜県総合医療センター。泌尿器科部長の高橋義人医師は、「ダ・ヴィンチ」が持つさまざまなメリットを考慮し、院内の勉強会などを通じて導入を早くから訴え続けてきた。ただ、あくまで「ダ・ヴィンチ」は「目的ではなく手段」だと強調する。「現時点では『ダ・ヴィンチ』によるロボット手術は話題性があり、他の医療機関との差別化になるかもしれません。ただ、この他病院との差別化を目的にするのは大きな間違いです。欧米の状況を見てみても、近い将来、手術支援ロボットの導入が当たり前になる時代が必ず来ます。そうなると技術の差は埋まり、手技における能力の格差が一気に縮まることになります」。
 これからの手術は、「持つ」「切る」「縛る」といった技術の優劣で差が出る時代ではなく、手術支援ロボットという道具をいかに使いこなすかというソフトの部分が重要だと話す高橋医師。「手術支援ロボットが導入されたとしても、ロボットがすべてを行うわけではありません。どのような手術を行うのかを判断するのはあくまで術者です。今後は判断力や思考力の部分で差が出る時代になるだろうと思います」。

Episode 04 /

「ダ・ヴィンチ」は、地域の基幹病院としての責務を果たすための先行投資。


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 さまざまなメリットがあるものの、数億円単位の初期投資が非常に大きい「ダ・ヴィンチ」。同院がそれでも巨額の先行投資に踏み切った背景には、基幹病院としての責任を果たしたいという強い思いがある。
 アメリカではすでに泌尿器科手術の多くが「ダ・ヴィンチ」で実施されている。とくに前立腺がんにおける前立腺全摘手術の7割以上がロボット手術で行われ、有用性もすでに立証されている。同院の「ダ・ヴィンチ」の導入には、地域がん診療連携拠点病院として多くのがん患者を抱えるなか、常に最高水準の医療を提供したいという責任とプライドが垣間見える。
 また、将来的に手術支援ロボットが普及すれば、ロボットを使える医師の育成が課題となる。「ダ・ヴィンチ」を早期導入すれば、既存の医師がそれだけ経験を早く積み上げられるだけでなく、将来を担う優秀な研修医獲得の起爆剤にもなりうる。「まずは研修医に触ってもらうことが大事。これが花開くのは10年後かもしれませんが、今から投資することが重要だと思います」と高橋医師は話す。
 さらに、「ダ・ヴィンチ」には、地域連携の面でも大きな期待がかかる。元々「ダ・ヴィンチ」は、戦地の兵士を遠隔操作で手術するために開発されたもの。今後、タイムラグがなく情報を伝達できるインフラが整備されれば、院内にいながら医療過疎の遠隔地での手術を行うことも可能になるだろう。
 「ダ・ヴィンチ」の導入をきっかけに、岐阜県総合医療センターを取り巻く地域医療の未来はどう変わるのか。今後もその「改革」に熱い視線が注がれるのは間違いない。

COLUMN /

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●岐阜県岐阜市にある岐阜県総合医療センター(理事長兼院長 渡辺佐知郎)は、明治42年に陸軍省が開設した岐阜県衛戌病院を前身とする医療機関だ。平成18年11月5日までは岐阜県立岐阜病院という名称だったが、建物の新築・改築を機に名称を変更。同年11月6日の本館完成とともに、現在の名前に改称。平成22年4月1日には、地方独立行政法人化を果たした。

●一般的に行政組織の運営には制約が多く、自発的な効率化や質の向上を図りにくい。また、事前のチェックを重んじる官庁会計のため、弾力的な財務運営が困難なケースも多い。岐阜県を支える基幹病院として大きな役割を担ってきた同院でも、平成22年度から独立行政法人化したことで、より自由度の高い病院運営を行えるようになった。同院が手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」の導入という積極的な投資を決断できたのも、独立行政法人化による柔軟な運営によるところが大きい。

BACK STAGE /

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●日本では大学で6年間に及ぶ医学教育が実施されているが、医師免許を持たない学生は法律上医療行為を行えないため、実地による経験がほとんどない状態で大学を卒業する。このため、医師免許取得後、研修という名目で臨床経験を積む卒後教育が制度化。平成16年4月から導入された新制度では、2年間の臨床研修が義務化されている。

●ただ、新たな臨床研修制度は、さまざまな問題が指摘されている。マッチング制度の導入で研修先が自由に選べるため、研修医が都市部に流れ、地方の医師数が不足。また、責任が重く、訴訟リスクの高い外科系は不人気という事態もあり、多忙な科であるのに人員不足に陥るという状況が生まれている。外科医の負担を軽減させる「ダ・ヴィンチ」は、こうした研修医たちに外科手術への興味を持たせ、迅速かつ効率的な教育を促す道具としても期待されている。


ACCESS /

岐阜県総合医療センター
〒500-8717 岐阜県岐阜市野一色4-6-1
TEL 058-246-1111(代)
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