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「顔が見える関係」を基本に、
医療・福祉のネットワークを広げていく
地域医療連携センターの取り組み。

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Episode 01 /

3つの機能を集結し、新たな一歩を踏み出した
地域医療連携センター。

今春、改装工事が完了したばかりの、名古屋第二赤十字病院の外来部門。きれいにリニューアルされた正面エントランス横に、新しく「地域医療連携センター」のカウンターがお目見えした。
 地域医療連携センターは以前からあったが、病院の顔とも言える玄関近くに移動して看板を掲げるのは初めてのことだった。この狙いはどこにあるのだろうか。「これまで別々に活動していた地域医療連携センターの3つの機能を1カ所にまとめることで、横の繋がりを深めていこうと考えました」と語るのは、地域医療連携センターの長谷川 洋センター長(副院長)である。
IMG_2207.jpg 3つの機能とは、「医療連携室」「退院支援室」「医療・福祉相談室」である。まず、患者の適切で速やかな診療のために、連携する地域医療機関との事務業務全般を支える「医療連携室」。続いて、医療社会福祉士、医療ソーシャルワーカーが中心となり、患者が抱える社会的・経済的・制度的問題をサポートする「医療・福祉相談室」。最後に、継続看護の視点から患者の退院を支援し、転院や在宅サービスの調整などを担う「退院支援室」である。それぞれの部門を構成するスタッフは、事務系職員、医療社会福祉士、医療ソーシャルワーカー、看護師など職種もバラバラで、これまで積み重ねてきた歴史も違う。言わば混成部隊とも言えるメンバーが1カ所に集まり、協働することで、時代の変化やニーズに機敏に対応していこうとしている。

Episode 02 /

患者のためにいかに連携していくか。
その答えの一つが疾患ごとの連携システム。

IMG_2350.jpg 地域医療連携の基本は、“患者さんのために”という思いだという。「患者さんのためにどうあるべきかを考え、地域のさまざまな医療機関がお互いの役割を理解し、歩み寄っていくことが大切だ」と長谷川センター長は力説する。
 今、地域医療連携センターが最も力を注いでいるのは、転院や退院を必要とする患者を後方支援病院や在宅医療へと繋ぐ仕組みづくり。それも、疾患ごとの専門性に基づいた連携を志向している。たとえば、大腿骨頚部骨折や脳卒中については、退院後も患者が安心して継続的な医療を受けられるように、「地域連携クリティカルパス(※)」を運用し、成果を上げてきた。それを、すでに稼働している5大がん疾患や今後検討される、心臓疾患、糖尿病などの運用へと展開していくことを構想している。「たとえば、がん疾患の患者さんを専門外の診療所に紹介しても、十分な継続治療は望めません。そういうことがないよう、各連携先の専門性をしっかり把握し、継続的な治療計画に基づいて患者さんを最適な医療機関へ引き継いでいきたいのです」(長谷川センター長)。
 そのために注力しているのがIT化の推進である。名古屋第二赤十字病院では2010年、院内のカルテをすべて電子カルテに移行した。そのメリットを活かし、連携先の医療機関と患者の診療情報を共有していく計画だ。万全のセキュリティ体制を前提として、いかに統一した使用環境を構築していくか。課題はいろいろあるが、電子カルテ共有システムが実現したとき、医療連携のスピードは一気に加速すると期待されている。

※地域連携クリティカルパス 地域医療の連携を促進し、切れ目のない医療を提供するためのツール

Episode 03 /

地域医療連携は、救急・急性期医療を守るために。

IMG_2273.jpg 名古屋第二赤十字病院が地域医療連携に力を注ぐ背景には、医療財政が逼迫するなか、地域完結型医療の構築を進める国の政策がある。しかし、単にそういう理由だけではない。
「地域連携は、当院の大きな使命である救急・急性期医療機能を守ることに繋がっています」と長谷川センター長は言う。同院は年間、約8000台の救急車を受け入れ、ウォークインを含めた救急患者数は5万人を超える。ベッドの埋まり具合を示す病床稼働率は常に90%を超え、患者の平均在院日数も12日程度と短い。病棟スタッフは必死にベッドコントロールしているが、それでも退院がスムーズに進まず、ベッドが満床になり、次の救急患者を受け入れられないことがあるという。
 出口の解決なくして、入り口の維持なし。そこで昨年9月、長谷川センター長は救急の現場を知り尽くした人物を、地域医療連携センターの副センター長に抜擢した。救急部副部長(医療社会部長)の塚川敏行医師である。一般的に事務系職員が主体になる地域医療連携の現場に、救急医が配属されるのは全国でもめずらしい。塚川自身、最初に打診を受けたとき、「救急と連携はいちばん遠いのでは…?」と、長谷川の真意を計りかねたという。しかし、業務を進めていくなかで、すぐに謎は解けた。「救急の入り口で、患者さんを紹介してくださった診療所や病院、施設の先生方に、出口の部分で患者さんをお返ししたり、再配分させていただくのが地域医療連携の仕事です。実は入り口と出口は非常に近い、と実感しました」と笑う。
 また、塚川医師がこれまで培ってきた院外での幅広い交流も大いに役立っているという。救急部門に20年以上在籍していた塚川医師は、診療科の区別なく広範囲にわたる診療所・病院の医師らと「顔の見える関係」を築いてきた。そのため、近隣の医療機関に出向けば、どこでも顔見知りの医師が快く迎えてくれる。形式的な挨拶もそこそこに、すぐに医療連携の課題について腹を割って話し合える。塚川医師はまさに院内での最適任者だったのである。


Episode 04 /

医療連携から、介護・福祉までを含めた包括的な地域連携へ。

IMG_2288.jpg 塚川医師を副センター長に迎え、ますますパワーアップする地域医療連携センター。医師や看護師、医療社会福祉士、医療ソーシャルワーカー、事務系職員がそれぞれの立場から自由闊達に議論を交わし、地域連携の課題を一つひとつ解決していこうとしている。
 しかし、その行く手には、超高齢社会という問題が立ちはだかる。患者の急増が予想されるこれからの時代、医療連携だけでは地域住民の健康な生活は守れない。医療と介護・福祉サービスが一体となり、住民のニーズに応えていくような地域での包括的な連携システムが求められているのだ。
 この大きな課題に、名古屋第二赤十字病院はどうやって応えていくのか。「現状ではやはり、医療と介護・福祉領域の間に壁があると思います。その壁を乗り越え、うまく繋いでいくような人材を養成していくことが重要な課題です。たとえば、継続ケアの視点で在宅療養までを見渡せる看護師のなかから、そういう橋渡しのできる人材を育てていけたら…と願っています」(長谷川センター長)。医療から、介護・福祉の領域へ。さらに広範囲の領域で人と人の繋がりを作りながら、地域医療連携センターは今まで以上に連携の絆を広げていこうとしている。


COLUMN /

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●名古屋第二赤十字病院が本格的に病診連携に取り組んだのは、1990年、名古屋市医師会の「病診連携システム」へ登録病院として参加したのがきっかけだった。以来、「face・to・face」をモットーに、顔の見える連携を大切にしてきた。

●2011年、同院・地域医療連携センターの呼びかけで、医療連携の実務者が集まる「愛知県地域医療連携実務者協議会」を立ち上げたのも、そんな伝統が引き継がれてきた証拠だろう。それまで実務者同士が膝を交えて語り合う機会はほとんどなかったが、この協議会をきっかけに、実務者同士が本当に必要な情報を交換し合い、貴重な気づきを得られるようになった。この協議会には現在、愛知県内110施設、約320名が参加。実務者の立場から地域連携の現状と課題を話し合い、今後の連携のあり方を模索している。

BACK STAGE /

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●地域医療連携を進めるうえで大きな問題となるのが地域住民の意識だ。高機能の病院で正しい診断・治療を受けたいという、患者の大病院志向は強い。一旦大病院へ入ってしまうと、治療して病状が安定しても、別の病院へ移りたくないというのが患者心理だ。特に大きな手術や治療をした場合には、主治医との強い繋がりができ、そこで転院となれば、「追い出された」という感覚を持つ患者もいるだろう。

●しかし、現状は違う。短い入院期間は一人でも多くの救急患者を受け入れるために必要不可欠なこと。病院が救急搬送の受け入れ拒否をせずに、地域の救急医療を守っていくことに繋がっている。一つの病院ではもはや医療は完結しない。住民一人ひとりが地域医療ネットワークへの理解を深めることが、求められているのではないだろうか。


ACCESS /

名古屋第二赤十字病院
〒466-8650 名古屋市昭和区妙見町2番地9
TEL 052-832-1121(代表)
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