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エンジンは「医療の基盤整備」、
機能は「ハブ病院」。
名大病院の新たな挑戦は、
すでに始まっている。

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Episode 01 /

大きな安心と信頼。だが、市民生活とは離れたところに存在した。

イメージ6.jpg「大学病院」というと、私たちはどのようなイメージを持つだろうか。
 あらゆる種類の診療科を持つ総合的な病院、そして、どんな病気でも最先端で最高の治療をしてくれる病院、といった大きな安心と信頼に繋がるイメージ。その一方で、医学研究のために患者が研究材料となる病院、医学界の頂点に立ち、地域の病院の上に君臨する病院等、小説『白い巨塔』に描かれた医学界での権威、権力を思い起こさせるイメージもある。
 こうした良い・悪い両方のイメージを、名大病院の松尾清一病院長にぶつけてみると、微笑みながらこう語ってくれた。「安心と信頼に繋がるイメージを持たれることは、とてもうれしいですね。でも、研究材料や権威、権力という言葉は耳が痛いです。昔の大学病院は、診療科ごとの医局中心で動いていた面がありましたからね。多分そこにあったのは、『医学のため』という内向きの視線。それが皆さんには解り難く、また、悪いイメージへと繋がったのかもしれません」。200124.jpg
 確かに、松尾病院長が言う「医学のため」という概念は、市民の日常生活とかけ離れ、私たちにとって身近なこととは思えない。つまりはそれが、さまざまなイメージを作り上げた原因なのだろう。

Episode 02 /

基盤整備を要に、臨床・教育・研究という使命を見つめ直す。

中面2.jpg では、名大病院の今を見つめてみよう。
 名大病院には、三つの使命がある。第一に「臨床」。大学医学部で構築した学問としての医学を、地域で診療行為として実践する。第二に「教育」。医師をはじめとした医療従事者の知識・技術を高める。そして第三に、臨床で、病気の原因解明や予防・診断・治療法の開発等を目的に行う「研究」がある。こうした臨床・教育・研究は、すべての大学病院に共通する。
 臨床・教育・研究において、現在、名大病院が取り組んでいることは何だろう。「医療の質と安全性を担保する『基盤』の整備です。そのため医療の質・安全管理部門や中央感染制御部、総合医学教育センター、また、先端医療臨床研究支援センター、予防早期医療創成センターといった機能・施設を強化、拡充しました。それらを活かし、さまざまな角度から一つひとつ検証して再構築しています」と松尾病院長は語る。
 目立たぬ地道な活動であるが、きっかけは何か。「医療事故の防止です。学問としての医学とは異なり、医療は、病気の治療だけに終始せず、生活背景まで含めて患者さんと向き合うものです。それを考えたとき、どれだけ最先端であっても、安全でなければ患者さんには意味がありません。すなわち『医学のため』ではなく、『医療のため』という発想が生まれたのです。
 具体的に言えば、臨床では、より先端的な医療、高度医療を安全な医療技術として提供し、さらに、地域医療の現場へと広げる。教育では、領域・分野ごとの先端医療を担う専門医と、複数の診療科の幅広い知識を持つ総合医の育成に力を注ぐ。加えて、医療は医師だけでは成り立ちませんから、看護師、検査技師といった他の医療職を育成する。そして、研究では、例えば治験でいうと、医学なら成果だけを求めますが、医療では患者さんの安全が大前提になる。このように、私たちは医療という視点からすべてを見直しているのです」。
 名大病院の基盤整備活動。それは従来の臨床・教育・研究の三つの大きなフレームに、確固たるエンジンを搭載することといえよう。

Episode 03 /

地域医療の崩壊、そして国際競争力の低下が、名大病院を変える。

中面1.jpg 「さらに」と松尾病院長は言葉を続けた。「社会全体を見ると、現在は『地域医療の崩壊』という大問題に直面しています。これは長年続いている医療費抑制施策によって引き起こされたもの。今なお未解決の救急医療や周産期医療の危機的状況等、大学病院として喫緊に取り組まないといけません。
 また、その一方で海外に目を向けると、欧米はもちろん東アジア諸国においても、規模では日本を超える病院が台頭してきています。決して日本の医療水準が下がったわけではありませんが、より優れた環境での提供を含めた総合的な面でいえば、『国際競争力の低下』を認めざるを得ません。
 地域医療の崩壊と国際競争力の低下。この現実を前に、大学病院に求められているのは何かと自らに問うたとき、私たちは何よりまず、『地域貢献』という、さらに新たな発想を持つことが必要だと気づきました。現在はそのためのより堅牢な基盤整備を進めているのです」。


Episode 04 /

基盤整備というエンジン、ハブ=繋ぎ役という機能。
地域とともに新たな一歩を。

中面3.jpg 松尾病院長は語る。「まずは基盤整備活動を徹底的に行います。と同時に、この活動は地域医療機関と協同することが不可欠です。名大病院だけに留めず、地域医療機関の声を聞き、一緒になって地域医療の基盤づくりに昇華させ、精度を高める。そしてその上に臨床・教育・研究の成果を乗せて、地域で実践するのです。地域医療機関で結果を出しているものは、取り入れていきます。また、地域医療機関からの提案にも、他の病院とともに考えていきます」。
 そうした活動において、名大病院は地域医療の「ハブ機能になる」と松尾病院長は言う。さまざまな病院がより円滑な連携をとるために。基盤整備の成果を地域の病院で展開するために。また、地域の医療偏在のバランスをとるために。「名大病院がハブ、すなわち繋ぎ役として機能することで、地域とともに、地域が抱える医療の課題、医療へのニーズに対応していきたいと考えます」。
 地域医療機関とともに行う新たな医療の実践。つまりそれは、地域医療のあり方を変えることに繋がる。「そうです。時代に対応する地域医療モデルの創造ですね。新たなモデルを東海地区で実践し成果を上げたなら、全国にも影響を及ぼすでしょう。その集大成が日本の医療の新たなスタンダードとなる。そうなれば真に社会貢献する医療として、世界に問うこともできます」。
 医学を中心に見る見方から、医療を中心に見る見方へ。自らが繋ぎ役として機能しつつ地域で実践し、その成果を全国へ。そして、世界へ。従来の大学病院という枠を自ら超えて、未来に向け名大病院はすでに始動している。


COLUMN /

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●「国立大学附属病院長会議」というものがある。これは、国立大学の大学附属病院、医学部附属病院等における諸問題と関連事項が協議され、意見を統一して、わが国の医学・歯学・医療の進歩・発展に寄与することを目的に誕生した。

●その会議において、二年前から「大学病院の使命」の見直しが図られている。臨床・教育・研究の三つに、地域医療への貢献、国際化という二つの使命を加えた「大学病院の将来に向けての提言」が作成され、松尾清一名大病院長はそのまとめ役である。

●これを実現するには、意見の調整を全国的に行わなくてはならない。松尾病院長は精力的に活動を進める一方で、その提言を名大病院自身がいち早く取り入れたいと考えている。すでに職員や構成員へのコンセンサスも図り、いよいよ機は熟してきたといえよう。

BACK STAGE /

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●今日の地域医療は、さまざまな問題を抱えている。そのなかで、個々の地域医療機関が自らの力だけで解決できること、また、個々では解決できないことがある。

●こうした現状を見つめたとき、名大病院のような、臨床・教育・研究、いわゆる医療の根幹を有する機能を持った大学病院の存在意味が、大きく問われているのではないだろうか。

そんな目線から考えると、今、名大病院が取り組んでいる自己改革は、私たち一般市民にとって決して他人事ではない。一つでも多くの地域医療機関が、名大病院とともに地域医療のあり方を見つめ直すことで、社会生活における安心と安全が高まるからだ。名大病院のこれからの活動に、大きく注目していきたい。

ACCESS /

名古屋大学医学部附属病院
〒466-8560 名古屋市昭和区鶴舞町65番地
TEL 052-741-2111(代)
http://www.med.nagoya-u.ac.jp/hospital/LinkIcon