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優秀な医療人を育てる環境を作り、
地域に開放していく、
名大病院の新たな挑戦。

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Episode 01 /

医療人の生涯教育を支援する
「卒後臨床研修・キャリア形成支援センター」。

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 医師の教育は卒前から始まり、医師となった後も生涯にわたり続いていく。その教育課程をシームレスに管理していくために、平成17年、名古屋大学医学部に「総合医学教育センター」が生まれ、名大病院に「卒後臨床研修・キャリア形成支援センター」が開設され、両者が連携することで卒前・卒後の教育が一元管理される体制が整った。
 これによってどんなメリットがもたらされたか。「卒後臨床研修・キャリア形成支援センター」のセンター長、植村和正(医学部附属総合医学教育センター教授)は語る。「以前は卒前と卒後の教育課程が別々だったため、“卒前教育を担うものは卒後に何を求められているか知らない、卒後教育を担う者は卒前の教育を知らない”という状態でした。しかし、互いに情報や課題を共有することで、教育する側の意識が変わり、卒前・卒後のカリキュラムも修正され、卒後の研修においても個人の習熟度に合った目標を設定できるようになりました」。
 以前は、能力の高い研修医が現場で学生扱いされたり、反対に、全然経験していないことを現場で求められたり…というミスマッチがあったという。「自分の能力にマッチした目標が設定されることは、研修医が成長する上で非常に大きな進歩だ」と植村センター長は言う。同時に、名大病院に限らず、研修医教育そのものも変化してきたという。「従来のように指導医の背中を見て学べ、という方法は通用しなくなっています。成人の学びで大事なのは、教育の内容をできる限り“言語化・明示化”することなんですね。学ぶ理由と目標を明確に示し、学習成果を測定することが重要になっています」。
1160075.jpg 教育の言語化・明示化、学習成果の可視化という流れのなかで、エポックメイキングとなるのが、平成18年に開設された「スキルス&ITラボラトリー(以下、スキルラボ)」だ。ここでは実際の臨床現場を模した環境下でさまざまなトレーニングが行われ、知識に裏打ちされた技能を習得することに加え、“診療における態度”を養う上でも成果をあげているという。医療人が持つべき“態度”とはどういうものか。「態度とは、単なる礼儀正しさだけではありません。患者さんやご家族の心情を深く洞察して、医療人の倫理に基づいて適切に振る舞うことです。患者さんや社会に説明責任を果たせるだけのスキルを培うトレーニングに力を入れています」と植村センター長は話す。

Episode 02 /

「私が命を救う」—
高度な救命技術を備えた看護師の育成を。

illust.jpg 次に看護師教育の動きを見てみよう。
 名大病院看護部が今力を注いでいるのは、「私が命を救う—Saving lifeナース育成プラン」である。これは、平成22年度文部科学省の大学改革推進事業「看護師の人材養成システムの確立」において採択された事業だが、狙いはどこにあるのか、三浦昌子副病院長(看護部長兼務)に話を聞いた。「救命処置については多くの学校で教育されていたり、臨床の現任教育においても、BLS・ACLS研修を行っているが、なかなか実践力の習得には至っていません。そこで、私たちはクリティカル場面における的確な判断力、確実な救命技術を修得できる教育プログラムを看護部と保健学科との共同で開発しようと考えました」。このプログラムは、フィジカルアセスメント能力、チームとして270029.jpgの実践力、コミュニケーション能力の獲得に力点が置かれている。たとえばフィジカルアセスメントでは、心音や呼吸音の聴き分け方を訓練するなど、教育内容はかなり実践的だ。「このプログラムは学習と臨床実践力を統合させるトレーニングであり、学校と臨床現場を繋ぐことも大きな狙いです」と、三浦副病院長は言う。なるほど、どれだけ学校で学んできても、新人看護師がいきなり救命の最前線に立たされたときのストレスは大きい。シミュレーション教育で訓練を積めば、学習した内容と臨床実践力が結びつき、それだけスムーズに現場に対応できるというわけだ。
 さらに、三浦副病院長はこの教育プログラムを地域の病院へ広げていくことをめざしている。「地域の看護師たちがe-ラーニング(情報技術などを利用した学習形態)によって学び、名大病院のスキルラボでトレーニングを積むような汎用性の高い教育プログラムを作りたいんです。最終的には地域の看護全体の質的向上を支援することが私たちの目標です」。

Episode 03 /

大学がもつ教育リソースを開放していく。

 名大病院における医師教育と看護師教育の変革。両者に共通するのは、「開放」というキーワードだろう。実際、この4月からスキルラボが地域病院を対象に本格的に開放され、地域の若手医師や看護師たちがスキルラボでトレーニングを積むことができるようになる。大学の教育リソースを地域に開放することで、地域の医療教育はいっそう進化することが期待される。
 また、医師教育については、これまで医局制度が担ってきた生涯教育の機能を「卒後臨床研修・キャリア形成支援センター」が新しい形で「開放」させていく意味ももつ。「たとえば入局手続きしたいけれどコネクションがない、という研修医には喜んで診療科に橋渡ししています。名大病院で勉強したいという他大学所属の人もいるし、その逆のケースもあります。そういう流動化がもっと進めばいいですね。その上で、医師のキャリアデザインを支援するのが、当センターの役割です」と植村センター長は語る。医局が従来もっていた枠組みを否定するのではなく、そのポジティブな機能を開放させることで、「卒後臨床研修・キャリア形成支援センター」は新時代に求められる医師の生涯教育のスタイルを築こうとしているのだ。


Episode 04 /

教育はすべてを繋ぐ、ネットワークの柱となる。

IMG_9264-2.jpg 名大病院の教育における「開放」というキーワードは、「繋ぐ」という言葉に置き換えることもできるだろう。高度なシミュレーショントレーニングを通じて「学校と臨床現場を繋ぐ教育」、職種横断的なチーム医療のトレーニングを通じて「多様な職種を繋ぐ教育」、教育リソースを地域へ還元することで生まれる「大学と地域医療・福祉・行政を繋ぐ教育」。医療教育を軸に、これまで壁に隔てられてきたフィールドが繋がっていこうとしている。そのときに前提となるのは、「イーブンパートナーの関係」だと植村センター長は言う。「どこの病院が頂点にあって…という関係ではなく、すべての病院が優劣のない連携を結び、互いの教育リソースを開放し合うのが理想だと考えています」。
 さらに、植村センター長はその先を見据える。「当センターのスキルラボを、医療機器の商品開発にも利用してほしいと考えています。教育は教育単体で存在するのではなく、多様に連携することでさまざまな可能性が広がっていくのではないでしょうか」。
 人材あってこその医療。その人を育てる高度な教育を追求することで、名大病院は地域医療や産業界へ幅広く繫がり、新たな価値の創造に向け歩みを重ねている。


COLUMN /

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●「スキルス&ITラボラトリー(通称スキルラボ)」は、名大病院の中央診療棟内にある。ここには、医療面接や身体診察をはじめ、エコー操作、呼吸音・心音聴診実習、救急処置、画像診断など、さまざまな実習を、実際の医療現場を模した各種の疑似環境のなかで行うことができる。また、医学的知識と思考能力を高めるために、ITを用いてさまざまな臨床状況を再現できる環境も用意。現在は外科系シミュレーターのさらなる充実を図っており、2013年4月には、より専門的な高度トレーニングが可能となる。

●現在、世界の医療機関では、臨床技能教育を効果的に行うために、同じようなスキルラボが活用され、その教育手法(方略)は職種を問わず、教育学的有効性が認められている。本年4月から地域医療機関に本格的に開放され、地域医療の教育トレーニング場としての役割を担っていこうとしている。

BACK STAGE /

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●今後、超高齢社会が進めば、今まで以上に多くの医療スタッフが福祉・行政のスタッフも交えて連携し、地域の患者をケアする時代になっていく。そのとき、大学病院はどのような役割を果たすべきか。その一つの回答が、今回の取材を通じて語られた「教育を軸にして広がるネットワーク」だろう。

●「大学の教育リソースを地域に開放すると同時に、今後は多くの職種間の有効なコミュニケーションを教育のテーマとして取り組むべきだと思います」(植村センター長)。「もはや病院が単体で看護師を育てる時代ではありません。地域と一緒になって看護師を育て、患者さんがどこに行っても高度な看護を受けられるような仕組みを考えていかねばなりません」(三浦副病院長)。両氏の言葉のなかに、来るべき2025年問題を解決するヒントが隠されているのではないだろうか。

ACCESS /

名古屋大学医学部附属病院
〒466-8560 名古屋市昭和区鶴舞町65番地
TEL 052-741-2111(代)
http://www.med.nagoya-u.ac.jp/hospital/LinkIcon

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