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愛知県で最多の救急搬送を受け入れるもう一つのエンジン、
「地域医療連携室」の取り組み。

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Episode 01 /

地域の救急患者が基幹病院に集中する実態。

(岡崎)17140.jpg 年間9879台、1日平均27台。これは、岡崎市民病院が平成24年に受け入れた救急搬送数、愛知県で最多の実績である。岡崎市民病院は、愛知県岡崎市と幸田町で唯一の三次救急医療機関で、医療圏内の救急搬送が集中する状態がずっと続いている。とくに冬場はベッドが満床で、救急の収容能力は100%を超える。本来なら入院して経過観察すべき中等症の患者であっても、いったん自宅に帰って様子を見てもらい、症状が治まらないようなら翌日再受診してもらうこともあるという。「医師にとっても患者さんにとっても大変リスキーな状態です」。そう語るのは、地域医療連携室・室長の小林 靖医師(脳神経内科代表)である。救急搬送患者のうち、入院するのは本当に重症度の高い3割程度にとどまる。
 岡崎市民病院に、地域の救急患者が集中する背景には、西三河南部東医療圏が抱える「医療過疎」の問題がある。人口あたりの勤務医数・病床数が非常に少なく、二次救急医療機関も圧倒的に少ない。数少ない病院が交代で救急診療を行う二次輪番制を敷いているが、毎日ではなく、年末年始などは同院が100%負担しなければならない。二次輪番制に参加する各病院の医療機能も充分ではなく、比較的簡単な虫垂炎も含め、手術症例などはすべて同院へ送られてくる状態だ。また、介護施設にはそれぞれ協力病院があるものの、そこで対応できない症例が施設から直接送られてくるケースも多い。さらに、退院患者の継続治療を担ってくれる病院も少ない。回復期病院はそこそこ充足しているが疾患が限られる。それ以外の患者の受け入れ先がなかなか見つからず、平均在院日数は長くなりがちだという。

Episode 02 /

病院の医療機能を守る地域医療連携室。

IMG_4837.jpg 厳しい状況下にある同院の医療機能を守るために、日々奮闘しているのが地域医療連携室の面々だ。その基本戦略は、対話と協力を通じて、地域の医療を「繋ぐ」ことにある。
 病院の入り口においては、救命救急センター機能の強化をサポートし、地域医療機関へ「繋ぐ」役割を果たす。同院では救急患者をひと通り検査し、診断を下し、その上で重症でない患者を、ほかの病院へ送る「即日転送」の体制をとっている。その転送先を手配するのが、地域医療連携室のスタッフだ。以前は、スタッフが市中病院に片っ端から電話をかけ、空きベッドの有無を問い合わせていた。しかし、昨年夏から岡崎医療圏病床運用情報システム(AOI)の運用がスタート。周辺病院の受け入れ可能病床数をパソコン画面で確認できるようになった。「AOIの運用が始まり、探す時間は約半分になりました」と担当する医療ソーシャルワーカー・杉浦裕子は語る。通常、救急のトリアージは院内の各診療科に引き渡すことをいうが、同院では地域全体を対象とした院外トリアージ機能も担う。なお、診療所の医師もAOIの情報を共有し、対応可能な医療機関に直接連絡できることから、同院の負担軽減に繋がっているという。
 もう一つの大きな役割は病院の出口での活動。退院支援を通じて、患者のニーズと地域の後方病院を「繋ぐ」ことにある。退院支援の目的は、患者に退院後も継続した医療を提供することだが、同時に、救急医療を守るためにベッドの回転率を上げることが至上命題となる。地域医療連携室では、退院支援に携わる相談員を5名配し、入院早期から介入して、退院への道筋を作っていく。「たとえば、リハビリ転院の場合、“早く出て行ってほしい”のではなく治療のために必要な転院であることを説いたり、ご家族の希望を聞きながら転院先を探したり、根気よく面会を重ねています」と、地域医療連携室副室長宮島さゆり看護師は語る。受け入れ先を求めて、岡崎市内だけでなく、豊川、豊田、西尾、碧南、刈谷、みよし、さらに名古屋市の病院や施設を探すこともある。医療依存度の高い患者はどうしても断られる傾向があり、かといって医療依存度が低過ぎても診療報酬の評価が低いことから断られる。受け入れ先のコーディネートは容易ではない。
 患者の理解と納得を引き出し、地域医療機関の努力と協力を仰いでいく。地域医療連携室は、病院、患者、地域医療機関のさまざまな思いや機能を「繋ぐ」連結機能を果たしている。


Episode 03 /

救急医療のプレッシャーが本来の高度急性期機能を妨げる要因に。


223017.jpg 地域医療連携室の奮闘は続くが、それでも、立ちふさがる現実がある。ベッドの収容能力を超える冬場などは、周辺の医療圏へ救急搬送を依存せざるを得ない。また、中等症の患者を一時帰宅させるなど、入院治療を充分に施せないジレンマもある。
 さらに、救急医療で医師も施設も手いっぱいになり、病院本来の高度な急性期医療機能を発揮できないことも問題だ。「外科系の医師からは、がん治療など本来の専門的な手術をもっとしたいという希望も出ています。でも、手術室が救急患者さんで埋まり、なかなか希望通りにいきません」と、小林室長は苦渋の思いを打ち明ける。同院が得意とするがん治療についても、岡崎地区で治療を受けている患者は半分程度。残りは域外へと流れている。また、同院は平成25年春に、血管造影装置と手術室が一体化した「ハイブリッド手術室」を導入したばかりだが、その最新鋭の設備をフルに活用していくためにも、マンパワーが必要だ。「夜中に救急の手術をして、翌朝、ハイブリッド手術室で難易度の高い手術をするわけにはいきません。医師にもスタッフにもゆとりが必要です」(小林室長)。


Episode 04 /

ピンチこそチャンス。
より高度な医療をめざす。

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 医師、病床ともに不足するなかで、少子高齢化が急ピッチで進む西三河南部東医療圏は、将来、日本が直面する地域医療の縮図ともいえる。しかし、この現状を小林室長は決して悲観していない。「ある意味、医療の質を高めるチャンスだと捉えています。医師や看護師を充実させ、医療の質を追求すれば、患者さんをより早く治すことができます。たとえば脳卒中の場合、入院中に合併症を起こさないことで入院期間も短くなるし、予後もよくなる。そうなれば、ベッドの回転率も上がり、在宅療養へもスムーズに繋ぐことができます。私たち基幹病院でやれることは精一杯やることで地域医療を支えていく。そういう意識をもつことが、スタッフの意欲にも繋がります」。その一方で、「地域の方々に、医療機関の正しい選択の仕方、かかりつけ医をもつ必要性などを啓発していくことも大切」だと話す。
 同院では、一般病床50床に救急病床15床をあわせた合計65床を増床する計画を立てている。また、平成25年春に訪問看護師2名が在宅医療支援に乗り出した。設備とマンパワーの拡充を図りながら、地域の医療は自分たちが中心になって守っていく覚悟だ。


COLUMN /

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●一般に、「地域医療連携室」というと、地域の医療機関からの紹介患者の受け入れ調整をはじめ、主に病病連携・病診連携に関わる業務を行う。しかし、同院ではそれだけでなく、救命救急センター機能のサポート、福祉介護問題の相談、苦情受付、退院支援など多様な業務をこなしている。その狙いは、さまざまな機能を一つに集約することで、横の繋がりを緊密化させること。スタッフ間の情報共有が進み、業務の効率化と質的向上に繋がっているという。

●同院における地域医療連携室は、単なる事務部門ではない。医師をヘッドに、看護師や社会福祉士などが、患者の多様なニーズをトータルに受け止める医療サービス部門ともいえる。さまざまな社会的・経済的背景をもつ高齢者が増えるなかで、こうした部門の存在がますます重要になっていくだろう。

BACK STAGE /

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●西三河南部東医療圏が抱える問題は、複雑で多岐にわたる。そのなかで一ついえることは、地域の基幹病院を補完する機能を果たすべき二次医療機関が圧倒的に不足していることだろう。それは、救急の入り口にも出口にも共通していえる大きな課題である。

●基幹病院だけが頑張る、いわば「病院完結型」の医療スタイルでは、ますます高齢化が進むこれからの地域社会のニーズに応えることは到底できない。岡崎市民病院の地域医療連携室の活動に見られるように、地域の限りある医療機関との連携を推進していくことが求められる。当然そこには、県立・市立・民間病院という設立母体の違いを超えて手を携える意識変革が必要だ。「地域医療を守る」という大きな観点から、基幹病院を中核に据えた、病院同士のネットワークづくりが大きな課題といえるだろう。

ACCESS /

岡崎市民病院
〒444-8553
愛知県岡崎市高隆寺町字五所合3-1
TEL 0564-21-8111
FAX 0564-25-2913
http://www.okazakihospital.jp/LinkIcon

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