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ICU看護は五感を試される場。
「知力」を総動員したうえで、いかに「心」を尽くせるか。
この姿勢が、患者やその家族の本質を知ることに繋がる。

公立陶生病院
濱本実也 ICU(集中治療室)/集中ケア認定看護師


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Episode 01 /

自らの五感を研ぎ澄まし、患者の求めるものを感じる。

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 「声にならない声をどう聞くのか。それが私たちの看護の真髄ですね」。愛知県瀬戸市の公立陶生病院でICUの看護師たちを率いる濱本実也看護師長。外科系の混合病棟からスタートし、さまざまな病棟に関わってきた。そんな彼女が大切にするのが、冒頭の「声にならない声」だ。
 患者の状態を維持することに主眼が置かれるICU。その主役は看護師だ。同院のICUを立ち上げ、今日の軌道に乗せた集中治療室主任室長の川瀬正樹医師も、「ICUでの医師の役割はデスクワークが中心。比率でいえば、おそらく90%以上が看護ケアだと思います」と語る。
 ICUではとりわけ重症度の高い患者を看る。意識のある患者であれば看護師の言葉に返答したり、自分でナースコールを押すこともできる。だが、ICUの患者には自発的な応答は期待できない。看護師の“気付き”がすべてのシビアな世界だ。もちろん人工呼吸器のアラームが鳴って異変に気付くこともある。ただ、濱本看護師長は「アラームが鳴った後に対処するのと、聞こえない声を受け取るのとでは雲泥の差です」と話す。
 「看護師は、患者さんのそばで“知力を尽くすもの”。知識・技術を駆使して力を出し切ることが大前提です。ただ、それ以上にどこまで“心を尽くせる”のか。呼ばれなくても、言われなくても、気付ける。そんな五感を試されるのがICUの看護です」。
 医療者が心を尽くす。それによって初めて患者やその家族の本質を見極められる。「これが顕著なのがICUの領域」だと濱本看護師長は言う。


Episode 02 /

与えられた任務に合わせて貪欲な向上心で知識を獲得。

IMG_8593.jpg 「声なき声」に気付く看護。そんな高みへと濱本看護師長を突き動かすのは、「今日より明日、より良い看護がしたい」という彼女の飽くなき向上心だ。自らのスキルアップはもちろん、院内の組織改革にも積極的に関わる。看護部長からは、「新しい動きを始めるときの“特攻隊長”よね」と言われるのだという。
 最初に配属された外科系の混合病棟では、呼吸療法認定士とケアマネージャーの資格を取得。その後、新設されたICUに異動後は、救急との連携を考えて救急救命士、そして、より良い看護を追求するために集中ケア認定看護師を取得した。与えられた部署でその役割を果たすべく、専門知識を貪欲に吸収し続けてきた。
 古い救急外来体制を再構築し、新たに部署として立ち上げる際には、学んできたことが役立った。愛知万博の開幕を控えて慌ただしくプロジェクトが進行するなか、わずか1年で開設にこぎつけた。「マニュアルなどすべてを構築しなければならず、本当に大変でしたね」と当時を振り返る。
 さらに、循環器・心臓血管外科病棟の電子カルテ導入では、システムの構築だけでなく、スタッフの育成にも力を注いだ。「まずは循環器内科と心臓血管外科を分けてチーム編成を行いました。2つのチームに大きく分けたうえで、急性期、慢性期などと役割分担を明確化し、その役割ごとに教育を施すことで全体での質を担保するようにしました」。
 再度ICUに戻ってからは集中ケア認定看護師の資格を活かし、今は「病棟間の連携」をテーマとしている。それまで勤務した循環器・心臓血管外科病棟は、ICUから患者を迎える側だった。それ以前はICUから患者を送る立場だったが、その逆を経験したことで、「ICUから送られてくる患者のケアの質」に疑問を感じた。現在は、“ICU後”を意識した看護を実践すべく努力を続けている。

Episode 03 /

グレーゾーンは許さない。最後まで「白黒」にこだわる。

 周囲の要求を的確に理解し、それに応え続けてきた濱本看護師長。その実績を見ると冷静沈着なリーダー像を連想させるが、「どちらかと言えば、素直に感情表現する方です」と自己分析する。「喜怒哀楽ははっきりしていますし、先生にも『そんなのダメですよ』と率直に意見を伝えます」。治療やケアに対して「患者さんが望んでいない」と思えば、医師に対してもストレートに意見を述べるという。川瀬医師もこれを歓迎している。「ICUはそれぞれの職域を認め合うのが基本。お互いの意見を尊重するようにしています。だから、濱本師長のように意見を出してくれるのは良いことだと思います」と話す。
IMG_8699.jpg 「先生は、医師の立場から医学的な根拠に基づいて話をされる。でも、患者さんの立場からすれば、必ずしもベストとは思えないこともある。患者さんを交えて『何が一番いいのか』をきちんと見つけ、合意のうえで進めていくこと。これこそが大事だと考えています」と濱本看護師長。その姿勢からは、「患者さんに一番近いのは看護師である」という彼女のプライドも見え隠れする。
 「仕事にはグレーゾーンがつきものです。上司からは『それを許容できるようになりなさい』と言われたこともありますが、突き詰めていけば、白か黒か明確にできる場合も多いと思います。それならば、簡単にあいまいにせず、できる限りはっきりさせていきたい。納得できないことに意見を出すという姿勢を守れないようでは、患者さんを守ることはできません。だから、明らかに間違っていると感じたときには、きちんと主張していきたいですね」。“できるかぎりグレーは作らない”。これが濱本看護師長の仕事の流儀なのだ。


Episode 04 /

看護師が最高の力を発揮できる、理想の管理者をめざしたい。

IMG_7921.jpgIMG_7896.jpg 現在、公立陶生病院では新病棟の建設が進んでいる。ICUも8床から20床へと増床される予定だ。これにより「現状の問題点もいくつか解消されるはず」と濱本看護師長は期待を寄せる。
 「当院では救急を断らないのが信条です。もしICUが満床になれば、搬送されてくる方とICUの患者さんとを比較し、病棟管理ができる状態に最も近い患者さんを病棟に送り出すことになります。そのため、ものすごいサイクルで患者さんが入れ替わるのです。今後、病床数が増えればこうした状況も緩和され、もっと余裕を持って患者さんを受け入れられるようになるはずです」。
 施設の面がネックとなり、患者の思いに応えきれなかった。そんな思いが強いだけに、新病棟の完成後は、「患者さんやご家族に、“より良い時間”を提供していきたい」と話す。
 ただ、濱本看護師長の日常は多忙を極める。看護師の業務に加え、学会発表は年5~6回、雑誌への執筆は4~5件、さらにセミナーや看護学校の講師を務め、年間20回以上の講演もこなす。これほどまでの活力はどこから湧いてくるのか。尋ねると「人と関わること。人の話を聞くのが好きだからですかね」と笑う。
 「本当はケアが大好きなのですが」と言いつつも管理者としての研鑽を積み、昨年は愛知県立大学大学院 看護学研究科博士前期課程看護学専攻 看護管理学を修了した。「管理者が変われば病棟の雰囲気も変わります。私が看護師長をするからには、一緒に働く看護師が最高の力を発揮できるようにしたいですから」。一人の看護師として、組織を牽引する管理者として――。彼女のひたむきな向上心が、新病棟の完成を控える公立陶生病院の急性期医療を支えている。

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COLUMN /

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●愛知県瀬戸市にある公立陶生病院は、瀬戸市、尾張旭市、長久手市が組織する三市一部事務組合「公立陶生病院組合」が出資・運営する公立病院だ。昭和11年に市町村組合立病院として設立以来発展を続け、今では急性期医療を中心に幅広い診療機能を持つ中核病院として、地域医療に大きく貢献している。

●同院では現在、新棟の建設、既存棟の改修工事を含めた大規模なリニューアル計画が進行中だ。なかでも、新棟への建替事業は、東棟の耐震問題の解消と同時に、救急外来、手術室、ICUなどの急性期医療部門の整備に主眼が置かれている。現在の第1駐車場の敷地の一部に、地上10階、延べ床面積約1万8000平方メートルの新棟が完成する予定だ。救急医療の崩壊が叫ばれる昨今にありながら、「24時間・断らない救急」を実現し続けている同院。急性期に特化した新病棟が完成すれば、同院の急性期医療体制は、さらに盤石なものとなろう。


BACK STAGE /

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●看護師の世界では、1995年に認定看護師制度ができたことで、より専門性の高い知識・技術を生かして活躍する「スペシャリストへの道」を選ぶ看護師が増えてきている。広範な知識を身に付けたジェネラリストをめざすのか。高い専門性を持ったスペシャリストになるのか。自分の将来像を描きながら、多様な方向性を選択できる時代となった。

●最近では、管理者としての知識を高めるために「認定看護管理者」の資格取得をめざす人も増えている。入院中の患者やその家族はもちろん、地域住民に対して質の高い組織的看護サービスを提供するため、看護管理者としての資質と看護の水準を維持することを目的とした資格認定制度だ。今後は、看護、組織、地域を広い視野で見つめることができる、こうした「管理のスペシャリスト」の必要性も増していきそうだ。


ACCESS /

公立陶生病院
〒489-8642 愛知県瀬戸市西追分町160番地
TEL 0561-82-5101
FAX 0561-82-9139
http://www.tosei.or.jp/LinkIcon

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